今日の臨床サポート

軽度認知障害

著者: 小野賢二郎 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 脳神経内科学

監修: 高橋裕秀 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科

著者校正/監修レビュー済:2022/07/06
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 認知症と年齢に伴う認知機能低下の中間に位置する病態として、mild cognitive impairment(軽度認知障害、MCI)あるいはvascular cognitive impairment(血管性認知障害、VCI)という概念を理解しておくことが大切である(推奨度1)
  1. MCIは、非認知症と認知症の中間の病態と考えるよりも、アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症の準備状態と考えた上での対応が望ましい。
  1. VCIは、脳血管障害あるいは血管性危険因子を有する群に認められる認知機能障害の総称であり、この概念の中には、血管性認知症や脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症、認知症に進展していない認知機能低下など多彩な病態が包括される。
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小野賢二郎 : 報酬額(神甲会 隈病院)[2022年]
監修:高橋裕秀 : 特に申告事項無し[2022年]

改訂のポイント:
  1. 現在の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症の診療の現況を踏まえて定期的レビューを行った。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 認知症診療では、認知症に進展している患者と年齢に伴う認知機能の低下(生理的な物忘れ)を示す高齢者を鑑別することが最も重要であるが、実際の現場ではこれが最も難しい課題である。
  1. 両者の中間に位置する病態としてmild cognitive impairment(軽度認知障害、MCI)あるいはvascular cognitive impairment(血管性認知障害、VCI)という概念を理解しておくことが大切である。
  1. MCIは、非認知症と認知症の中間の病態と考えるよりも、アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症の準備状態と考えた上での対応が望ましい。一般地域住民における年間の認知症発症率は1%から2%といわれるが、認知症疾患診療ガイドライン2017では、MCIから認知症へのコンバートは年間5%から15%であり、リバート(正常あるいは生理範囲内に戻る)は年間16%から41%と推測されている。
 
  1. 一般住民を対象とした検討では、65歳以上の高齢者の10から20がMCIの範疇に入るといわれる。日常臨床で医院を受診する患者さんも高齢化してきており、認知症にまでは進展していないが、このMCIの範疇に属する対象者は少なくないものと推測される。外来診療では、認知症あるいは軽度の認知機能低下の存在を常に念頭に置いた診療が勧められる(推奨度2、O)(参考文献:[1][2][3][4]
  1. Petersenらの報告から、70歳から89歳の年齢層では、amnestic MCIの発症頻度は11.1%、nonamnestic MCIは4.9%とされる。イタリア人2,830人を対象としたDi Carloらの検討では、MCIの頻度を16.1%と報告している。
 
  1. VCIは、脳血管障害あるいは血管性危険因子を有する群に認められる認知機能障害の総称であり、この概念の中には、血管性認知症や脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症、認知症に進展していない認知機能低下など多彩な病態が包括される。
 
  1. アルツハイマー型認知症と脳血管障害は、高齢者では頻繁に共存する。高血圧や糖尿病などの血管性危険因子はアルツハイマー型認知症の発症や進行度に関連するとの報告が多いが、これらの因子はMCIの発症や認知症への進展に関係する可能性が想定される(エビデンスレベルO)(参考文献:[5][6][7]
  1. 37人のMCI患者さんを年間追跡調査したLiらの報告では①血管性危険因子は、認知機能や日常生活動作のより早い低下と関連する②血管性危険因子を持つ患者群は、持たない群よりもアルツハイマー型認知症に移行する危険性がより高い③血管性危険因子を治療している群は、していない群に比してアルツハイマー型認知症に移行する危険性はより低い――としている。直近の脳血管障害発作や心房細動がMCIから認知症への移行の引き金になるともいわれる。また、血管性危険因子の治療はアルツハイマー型認知症で見られる認知機能障害の進行を遅らせる[8]
病歴・診察のポイント  
  1. 置き忘れや語想起の困難など軽微な物忘れは加齢現象としてしばしば見られるものであるが、MCIでは、患者さんが以前ならば容易に記憶できていた重要な情報、例えば、約束事や電話の内容、興味のある事柄に関する最近の出来事などの記憶の障害から発症することが多い。

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文献 

Gill Livingston, Andrew Sommerlad, Vasiliki Orgeta, Sergi G Costafreda, Jonathan Huntley, David Ames, Clive Ballard, Sube Banerjee, Alistair Burns, Jiska Cohen-Mansfield, Claudia Cooper, Nick Fox, Laura N Gitlin, Robert Howard, Helen C Kales, Eric B Larson, Karen Ritchie, Kenneth Rockwood, Elizabeth L Sampson, Quincy Samus, Lon S Schneider, Geir Selbæk, Linda Teri, Naaheed Mukadam
Dementia prevention, intervention, and care.
Lancet. 2017 Dec 16;390(10113):2673-2734. doi: 10.1016/S0140-6736(17)31363-6. Epub 2017 Jul 20.
Abstract/Text
PMID 28735855

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