今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 加藤英明 横浜市立大学附属病院感染制御部、医学部血液・免疫・感染症内科

監修: 上原由紀 藤田医科大学医学部感染症科

著者校正/監修レビュー済:2024/10/31
参考ガイドライン:
  1. 米国感染症学会(IDSA)ガイドライン:Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016;63(4):e1-e60.
  1. 欧州癌研究機関/真菌症研究グループ(EORTC/MSG)深在性真菌症診断ガイドライン:Revision and Update of the Consensus Definitions of Invasive Fungal Disease From the European Organization for Research and Treatment of Cancer and the Mycoses Study Group Education and Research Consortium. Clin Infect Dis. 2020;71(6):1367-1376.
  1. 欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)ガイドライン:Diagnosis and management of Aspergillus diseases: executive summary of the 2017 ESCMID-ECMM-ERS guideline. Clin Microbiol Infect. 2018;24:e1-e38.
  1. 日本臨床腫瘍学会:発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(改訂第3版)(2024)
  1. 日本医真菌学会:希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン(2024)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン(2024)』にそって糸状菌眼内炎の治療について加筆した。
  1. 糸状菌による播種性眼内炎では、全身抗真菌薬投与のみで有効性が得られた症例報告はなく、硝子体手術、抗真菌薬の硝子体内手術を行う。それでも眼科的予後は不良である。
  1. 『発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(3版)(2024)』に基づき、以下について追記した。
  1. ボリコナゾール(VRCZ)などの抗糸状菌薬が投与されていない、遷延するFNに対しては、抗糸状菌薬の経験的治療と先制攻撃的治療で侵襲性アスペルギルス症の発症率と生存率に差がなかった報告が引用された(Maertens J, et al. Clin Infect Dis. 2023 Feb 18;76(4):674-682.)。これは先制攻撃的治療の有用性を示すものだが、頻回なガラクトマンナン抗原や胸部CTの評価が必要なことは懸念されている。同様に、VRCZなど抗糸状菌薬が投与されている状況では先制攻撃的治療が有用かどうかRCT等での比較はない。VRCZ等に耐性の真菌感染症を疑い、積極的な培養採取や抗真菌薬の広域化、併用が推奨される。
  1. 血液疾患領域において好中球数100/µL未満の期間が7日間を超える場合、侵襲性アスペルギルス症の発症予防としてポサコナゾール300 mg 24時間ごと内服(初日のみ300 mgを12時間ごと内服)、ボリコナゾール200 mg 12時間ごと内服を開始することが推奨される(Raje NS, et al. Lancet Haematol. 2022 Feb;9(2):e143-e161.)。

概要・推奨   

  1. アスペルギルスは糸状菌と呼ばれる真菌の一つで、常に気道から吸入されているが免疫正常者ではアスペルギルス症を発症しない。ホストの免疫状態と病原体とのバランスによって発症リスクが変化する。患者背景として、好中球減少、造血幹細胞移植など免疫抑制状態が想定される(推奨度1、G)
  1. A. fumigatus を代表とする糸状菌による侵襲性真菌症は増加している(推奨度1、O)
  1. 侵襲性アスペルギルス症の診断は困難である。確診例“proven IA(proven invasive Aspergillosis)”もしくは疑い例“possible IA(possible invasive Aspergillosis)”という表現がなされる(推奨度G)
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
加藤英明 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上原由紀 : 研究費・助成金など(花王(株))[2024年]

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