今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小林俊光 仙塩利府病院 耳科手術センター

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2021/06/30
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、耳管開放症診断基準案の改訂、新規に提唱された耳管狭窄症診断基準、2020年の耳管ピン手術保険診療化、欧米におけるバルーン耳管開大術の普及などを反映させた。

概要・推奨   

  1. 鼻すすり型耳管開放症と非鼻すすり型耳管開放症を区別して診断し、前者では鼻すすり禁止を指導する。
  1. 耳管開放症軽症例には生活指導、保存療法を行い、耳管開放症重症例では、耳管ピン手術を検討する。
  1. 耳管狭窄症の診断においては、広義と狭義を区別し、広義では保存的治療を、狭義では手術的治療を含めて検討する。

まとめ 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 耳管は通常は閉鎖していて、必要に応じて開放するべきものである。このバランスが乱れることが両疾患(耳管開放症、耳管狭窄症)による病態形成につながる。
 
耳管開放症:
  1. 耳管開放症は耳管が異常に開放することが原因で症状を呈する。
  1. 重症度はさまざまであり、治療法も異なる。
  1. 耳症状としては、自声強聴、自己呼吸音聴取、耳閉感がある。自己呼吸音聴取は特異度が高い。これらの症状が急に出現し、また治ることを繰り返すために、発声が妨げられ、重症例では著しいコミュニケーション障害を来す。
  1. 体位によって軽快あるいは消失する耳症状があり、鼓膜の呼吸性動揺があることで確実例とする
  1. 鼻すすりで症状が軽快するものを鼻すすり型耳管開放症とする。鼓膜内陥を起こし中耳疾患の原因となる。
  1. 軽症であれば経過観察あるいは生食点鼻、漢方薬内服などの保存的治療でよく、重症例では手術治療も行われる。
 
耳管開放症の原因は多様である

耳管周囲の解剖と耳管開放症の原因を示したもの。体重減少は耳管前方のオストマン脂肪体の減少を招き、耳管が緩みやすくなる。シェーグレン症候群は耳管腺の分泌減少を来す。口蓋裂・奇形・外傷は、耳管軟骨の変形から耳管開放症となることがある。三叉神経第三枝に障害が起こると、口蓋帆張筋の萎縮が起こり耳管開放症となる。上顎前方延長術は口蓋帆張筋を牽引し耳管が開く。腎透析・激しい運動は脱水により耳管開放症となる。中耳炎が原因となることもある。

出典

著者提供
 
耳管狭窄症:
  1. 耳管狭窄症は耳管が器質的または機能的に狭窄することにより耳症状を呈する。
  1. 鼓膜陥凹、中耳貯留液(滲出性中耳炎)、コレステリン肉芽腫などの原因となる。
  1. 診断には鼓膜所見の観察、鼻咽腔内視鏡、耳管通気、ティンパノメトリー、側頭骨CT、側頭骨MRI、耳管機能検査などがある。
問診・診察のポイント  
耳管開放症:
  1. 問診:
  1. 自声強聴、呼吸音聴取、耳閉感など、特に自声強聴と呼吸音聴取の有無。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小林俊光 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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耳管機能不全(耳管開放症、耳管狭窄症)

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