今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 田中敏春 JA 新潟厚生連 上越総合病院 救急科

監修: 箕輪良行 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

著者校正/監修レビュー済:2022/06/08
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. JRC 蘇生ガイドライン2020に基づき、一部加筆修正を行った。

概要・推奨   

  1. バッグマスク換気の際の輪状軟骨圧迫法のルーチン実施は推奨されない(推奨度3)
  1. 声門上器具はバッグマスク換気および気管挿管に代わる妥当な気道確保法である(推奨度2)
  1. RSI(rapid sequence intubation)の際のロクロニウム投与は推奨される(推奨度2)
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  1. 気管挿管チューブの正確な位置確認のために最も信頼性が高い方法は“波形表示呼気CO2モニター(PETCO2)”である(推奨度1)
  1. “波形表示式呼気CO2モニター(PETCO2)”が使用できない場合には、身体所見に加えて、波形表示の無い呼気CO2モニター等で代用することを推奨する(推奨度2)
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まとめ 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 呼吸が停止しており、意識も反応もない心肺停止状態の患者に人工呼吸が必要であることは当然であるが、自発呼吸があっても明らかに酸素化と換気が不十分な患者に対しても人工呼吸が必要である。
  1. 呼吸停止の原因として、
  1. A(Airway)の異常(気道異物・狭窄、顔面外傷など)
  1. B(Breathing)の異常(低酸素血症、気管支喘息重責発作、胸部外傷など)
  1. C(Circulation)の異常(心肺停止、各種ショックなど)
  1. D(Dysfunction of CNS)の異常(各種意識障害)
のいずれでも起こり得る。
 
  1. 胸部CTでモチは高吸収域画像として描出されるため診断に有用である。
  1. 病歴:モチを食べていたところ、突然苦しそうな表情となり卒倒。救急隊が接触時、呼吸停止状態でかろうじて頚動脈は触知されていた。バッグマスク換気を実施するが抵抗あり、口腔内には明らかな異物なし。その後、搬送中に心肺停止状態となり心肺蘇生施行されながら搬送された。
  1. 診察:口腔内には明らかな異物を確認できず。気管挿管施行してようやくバッグマスク換気ができるようになったが、患者は心肺蘇生に反応せず死亡。
  1. 診断のためのテストとその結果:死後に胸部CT撮影したところ、気管内を占拠する高吸収域構造物(矢印)を認め、卒倒前の状況からモチであると推定された。
  1. 口腔内に異物を確認できなくても、CTでモチの存在を確認できる場合がある
 
モチによる窒息患者の胸部CT写真

モチが気管内に高吸収域として認められる。

出典

著者提供
 
  1. オピオイド(モルヒネ、フェンタニル、ヘロインなど)過量投与による呼吸停止に対してナロキソン投与が推奨される。(推奨度 1RG)
  1. ナロキソンは脳および脊髄におけるオピオイド受容体の強力な拮抗薬であり、オピオイド過量投与(麻薬中毒、硬膜外麻酔など)に引き起こされた中枢神経系または呼吸抑制を改善し得る。
  1. 1件のランダム化試験では、オピオイド過量内服(中毒)による呼吸停止が疑われる患者に対して、ナロキソン2mg筋注と2mg鼻腔内投与とで効果比較したところ、筋注群で効果が速やかに現れ、8分後の自発呼吸再開率も高い(82% v 63%; P = 0.0173)[19]
  1. 以上より、オピオイド過量投与による呼吸停止が疑われる患者に対して、バッグマスクにより補助換気を実施し、引き続きナロキソンを投与することは推奨される。
  1. ただし、オピオイド過量投与による心肺停止の状況に対して特定の薬剤使用を支持するエビデンスは存在しない。標準的なBLSまたはALSアルゴリズムに従うべきである。
 
  1. 呼吸停止に対する治療は、原疾患の治療ではなく適切な気道の確保である。
問診・診察のポイント  
  1. 頭頚部に外傷を認めない呼吸停止患者は、頭部後屈-顎先挙上法で気道を確保する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
田中敏春 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:箕輪良行 : 特に申告事項無し[2024年]

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呼吸停止

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