今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 梅野博仁 久留米大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2025/01/29
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、陳旧例瘢痕性外傷の治療において、近年その有用性の報告があるCO2レーザーを用いたEndoscopic Wedge Excision (EWE)の手技について言及した。
 

概要・推奨   

まとめ 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 喉頭は、前方は前屈した下顎、下方は鎖骨、後方は頸椎により保護されているため正面からの外力を受けにくく、また頸部において種々の筋肉により保持され、側方への可動性に富んでいることなどからも、比較的損傷しにくい器官であるといわれている。しかし、大きな外力が直接前方から喉頭に及ぶと後方に脊椎があるため、前後から押しつぶされる形になり多彩な損傷を起こし、呼吸・発声・嚥下の障害を引き起こす。交通事故・産業災害はもちろん、最近盛んになってきているスポーツでの外傷も増える傾向にある。
 
分類:
  1. 外傷はその受傷機転により、咽頭、喉頭の内腔からの損傷である内損傷と外頸部からの損傷である外損傷に分けられる。また外損傷は、皮膚損傷のない閉鎖性損傷(鈍的外傷)と開放性損傷とに分けられる。一方、治癒機転からは新鮮外傷と、陳旧性瘢痕性外傷とに分類できるが、陳旧性瘢痕性外傷は喉頭気管狭窄といった病態をとることが多く、これは初期治療が不十分のときに起こりやすい。重症度からの分類ではTroneの分類がある。わが国ではTroneの分類の不都合を改め、鈍的喉頭損傷に対する重症度分類と治療指針が報告されている。
 
Troneの重症度分類(Classification of laryngeal trauma)

出典

Trone TH, Schaefer SD, Carder HM.
Blunt and penetrating laryngeal trauma: a 13-year review.
Otolaryngol Head Neck Surg (1979). 1980 May-Jun;88(3):257-61. doi: 10.1177/019459988008800313.
Abstract/Text A 13-year retrospective review of 53 patients with laryngeal trauma seen between 1965 and 1975 at the University of Texas Health Science Center at Dallas affiliated hospitals is presented. Patient management fell into four groups: observation following direct laryngoscopic examination or observation alone (7 patients), direct laryngoscopic examination and tracheostomy (5 patients), open reduction of fractures without stenting (14 patients), and open reduction of fractures with stenting (27 patients). These cases were analyzed according to initial signs and symptoms, duration between time of injury and surgery as pertains to success of management, indications for open reduction of laryngeal fractures, and associated injuries.

PMID 7402667
 
鈍的喉頭損傷に対する重症度分類と治療指針

出典

梅野博仁, 千年俊一, 前田明輝, ほか. 喉頭外傷新鮮例への対応. 頭頸部外科, 2010; 20(2): 95-102.
 
  1. 頸部の視診・触診、喉頭内視鏡検査、CTなどの画像診断、喉頭機能(呼吸、嚥下、発声)を評価する各種検査を必要に応じて行う。なかでも喉頭内視鏡検査とCT検査は必須である。
  1. 喉頭内腔、喉頭の枠組み、機能障害。
 
  1. 急性期の治療と慢性期の治療に大別される。
  1. 軽度の喉頭外傷は、重症感がないために耳鼻咽喉科の受診が遅れがちである。また、喉頭内視鏡所見が軽微な場合には、CTなどの検査がなされず保存的治療を継続される場合もある。骨折整復は受傷後早期に行うことが望ましく、喉頭外傷症例に関しては内視鏡所見のみならず、CT検査により治療方針を決定すべきである。また、喉頭粘膜の修復が必要な症例には喉頭截開による粘膜の修復を行うことが望ましい。一方で、重症喉頭外傷は、頭部および全身外傷に伴うことが多く、気道確保が優先され喉頭の治療に関しては後手に回ることが多い。
  1. 陳旧性外傷は主として、喉頭機能(呼吸、嚥下、発声)の再建が目的となるため、より専門的な評価や治療が必要になる。骨折の整復も瘢痕化して困難なことが多く、喉頭の変形が著しい場合には、再建が必要になる。また、手術治療も段階的、長期間にわたる。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
梅野博仁 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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