今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 櫻井隆之 NTT東日本関東病院 感染症内科部長/感染対策推進室長

監修: 具芳明 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野

著者校正/監修レビュー済:2024/09/18
参考ガイドライン:
  1. 日本呼吸器学会:成人肺炎診療ガイドライン2024
  1. 日本マイコプラズマ学会:肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針 2014
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 日本呼吸器学会の『成人肺炎診療ガイドライン2024』が発刊され、「市中肺炎(CAP)における細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の鑑別」の内容を更新した。6項目中5項目以上に該当する場合は本疾患の可能性が高い。
  1. COVID-19パンデミックを経て網羅的PCRを実施できる施設が増えたため、保険収載も鑑み追記した。
  1. 抗菌薬変更のタイミングについて、48時間では判断まで短い可能性があるため、72時間に変更した。

概要・推奨   

  1. 明瞭なデータは得られないが、成人におけるマイコプラズマ肺炎において抗菌薬の投与は症状を軽減することが期待され、使用することが考慮されるべきである。ただし小児においては個別に検討することが必要である(推奨度2)
  1. マイコプラズマ肺炎における抗菌薬の選択は、耐性率などを考慮しながら、個別の症例ごとに検討することが推奨される(推奨度2)
  1. わが国においては小児を中心にマクロライド耐性マイコプラズマが急増しており、成人での感染例も存在する。マクロライドで72時間以内に解熱しない症例は治療を変更する(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)により引き起こされる肺炎である。軽症であることが多く、“Walking pneumonia”とも表現される。非定型肺炎または異型肺炎の一部である。
  1. 頭痛や咽頭痛、鼻汁や関節痛、消化器症状など多彩な症状がみられる。治療後も強固な咳嗽が1カ月程度残ることが多い。
  1. 若年者の重症感のない肺炎では、COVID-19以外ではマイコプラズマを一番に考えるとよい。本疾患を疑う所見として、日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」に列挙された「市中肺炎(CAP)における細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の鑑別」(下記)が参考になる。6項目のうち5項目以上に合致すれば本疾患の可能性が高く、2項目以下なら細菌性肺炎の可能性が高い。3、4項目に合致する場合は両者合併か鑑別困難と考える。かつては4項目以上の合致で非定型肺炎と診断でき、その感度は78%、特異度は93%とされていた[1][2][3]
  1. 1:年齢60歳未満
  1. 2:基礎疾患がないか、または軽微
  1. 3:強固な咳嗽
  1. 4:胸部聴診上所見が乏しい
  1. 5:迅速診断法で原因菌が同定されない
  1. 6:末梢血WBC 10,000/uL未満
  1. 感染力が強く家族内感染が多く見受けられる。すでに診断された人が身近にいるかどうかが重要である。
  1. マイコプラズマは小児疾患であるが成人にも感染する。ただしその病状は一般に軽く、肺炎に至る例は感染者の3~5%、その他は上気道炎(風邪症候群)、気管支炎などである。60歳未満が圧倒的に多いが、近年は育児を担当する60歳以上の例も珍しくない。本疾患に罹患する可能性はあるため、従前の「60歳以上ではみられない」は過去の話となった。
  1. 潜伏期間は2~3週間。発熱、頭痛などで発症し数日で強固な咳嗽が始まる。肺炎といえども軽症が多くwalking pneumoniaと呼ばれる。肺炎球菌肺炎の様なスピードはないが、ゆっくりと着実に悪化するイメージでよい。
  1. オリンピック開催年に流行するという「オリンピック病」は過去の話となり、現在は毎年流行している。秋の流行が多いが、年によって様相は異なり、一年中流行したこともある。
問診・診察のポイント  
  1. 年齢、基礎疾患の確認をする。60歳未満で基礎疾患がないかまたは軽微なことが多いためである。周囲に乳幼児がいる環境かどうかの確認も重要である。発症者からの飛沫感染が多い。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
櫻井隆之 : 未申告[2024年]
監修:具芳明 : 研究費・助成金など(MSD(株))[2024年]

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マイコプラズマ肺炎

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