今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 上原由紀 藤田医科大学医学部感染症科

監修: 上原由紀 藤田医科大学医学部感染症科

著者校正/監修レビュー済:2021/10/27
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、CDCのガイドラインと最新情報が確認できるWebsiteを参考ガイドラインの項に示した。
  1. 日本呼吸器学会による百日咳診断基準フローチャート(咳嗽喀痰の診療ガイドライン2019に掲載)の内容を追加した。
  1. ワクチンの種類、届出基準について加筆修正を行った。

概要・推奨   

  1. 非流行状態では、百日咳を診断するために有力な手がかりとなる症状はない。非特異的な症状しかなくとも、他の明らかな要因がなければ、積極的に鑑別診断に入れておくことが必要である(推奨度2)
  1. マクロライド系抗菌薬は、鼻咽頭から百日咳菌を除菌する効果はあるが、症状を軽減させる効果については十分な証拠がない(推奨度3)
  1. CDCでは、発作期のごく初期から3週目までの患者について、抗菌薬使用を開始してよいとされる。また重症化しやすい妊婦や乳児については、症状出現から6週目まで抗菌薬加療を開始するすることは適切とされている。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 百日咳とは、百日咳菌(Bordetella pertussis)による急性感染症で、長期にわたる激しい咳発作の特徴的な疾患である。なお、ワクチンは10年程度しか効果が続かないことがわかっており、近年、思春期、成人期以降の発症が目立ってきている。しかし、多くは症状が非特異的であることが多く、診断は困難である。長期に続く咳をみたら鑑別に挙げることが必要である。
  1. 百日咳は、ヒト-ヒト感染で、感染者の気道粘膜の分泌物による飛沫感染の形式をとる。感染後、通常7~10日の潜伏期間を経て、1~2週間の非特異的な上気道感染症状が主体のカタル期、特徴的な発作性の咳こみ、吸気性笛声(whoop)、咳き込み後の嘔吐(post-tussive emesis)が出現し2~3カ月持続する発作期、それらの症状が1~2週にわたって次第に軽快していく回復期を経て治癒する。
  1. 全体的な経過としては3カ月程度となることが多い。
  1. 小児期とは異なり、青年、成人期では致死的となることはない。喘息、喫煙が重症化に影響を与える。
  1. 基本的には免疫のないものは感染する可能性がある。ワクチンは10年程度しか効果が続かないことがわかっている。
  1. 百日咳は、ワクチン開発前は10歳未満の小児の疾患であったが、ワクチン導入後は米国の統計によると、患者の半数以上は青年期、成人期であり、青年期、成人の疾患に年齢層が移行している。日本国内も思春期、成人の発生は増えている。
  1. 伝染性は、カタル期と発作期のはじめを合わせたトータルほぼ2週間が最も強い。その後伝染力は低下し3週間以内にほぼ伝染性はなくなるとされている。
  1. 百日咳は感染症法の5類感染症に分類されている。青年・成人での感染がみられることから、2018年1月からは年齢にかかわらず全例、診断から7日以内に最寄りの保健所に届け出ることとなった。また、学校保健安全法で第2種感染症に指定されており、「特有の咳が消失するまで、または五日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで」を出席停止の期間の基準としている。
問診・診察のポイント  
  1. 感冒様の症状が2週間以内にありませんでしたか?また咳嗽が2週間以上続いていますか?

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
上原由紀 : 研究費・助成金など(花王(株))[2024年]
監修:上原由紀 : 研究費・助成金など(花王(株))[2024年]

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