今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 湯川泰紹 名古屋共立病院 脊椎・脊髄外科センター

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2023/05/24
参考ガイドライン:
  1. 米国脳神経外科医協会AANS、米国脳神経外科コングレスCNS:Guidelines for the Management of Acute Cervical Spine and Spinal Cord Injuries 2002
  1. 米国脳神経外科医協会AANS、米国脳神経外科コングレスCNS:Guidelines for the management of acute cervical spine and spinal cord injuries: 2013 update
  1. 厚生労働省:急性期脊髄損傷の治療を目的とした医薬品等の臨床評価に関するガイドライン
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、脊椎・脊髄損傷の最近の動向と薬物療法を中心に以下の通り加筆修正を行った。
  1. 全脊髄損傷のうち、日本では骨傷を伴わない頚髄損傷の比率が62.3%と1番高く、骨傷(脊椎外傷、骨折)を伴う脊髄損傷の比率が低下してきている。また人口の高齢化に伴い強直脊柱や骨粗鬆症を基盤とした脊椎外傷の比率が高まっている。
  1. ステロイド大量投与方法はその推奨レベルがclass Iからclass IIIに変更され、もはや推奨される治療法ではなくなった。
  1. 脊椎の脱臼・骨折がある場合は、安定化させる手術、及び残存した機能を最大限に活用するためのリハビリテーションが行われ、推奨すべき薬物療法が存在しないのが現状である。

概要・推奨   

  1. 高エネルギー外傷による脊椎損傷が疑われる場合には、呼吸状態、循環動態などの全身状態評価、必要な処置を優先し、その後に神経学的評価・画像評価を行うことが推奨される
  1. 頭蓋頚椎、頚胸椎、胸腰椎の各移行部での脊椎損傷は他の臓器との重なりが多く、単純X線では見落とされることがあり、CTによる評価が推奨される
  1. 高齢化に伴い強直性脊柱や骨粗鬆症を基盤とした脊椎損傷の比率が上昇しており、その病態、損傷形態に応じた治療法、手術法が求められる[1]
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脊椎は後頭骨の直下から始まり、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、5個の仙椎が一体化した仙骨、および3~5個の尾椎から構成されている。脊椎骨は体幹の支持という役割と、脊髄や神経根などの神経要素を内包し保護する役割を担っており、損傷されると体幹支持性の喪失と神経要素の損傷(脊髄・馬尾・神経根損傷)という2つの事態を生じる。また、可動域の多い頚椎、腰椎の順に脊椎外傷を受傷しやすい。
 
脊椎晒骨模型

脊椎は後頭骨の直下から始まり、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、5個の仙椎が一体化した仙骨、および3~5個の尾椎から構成されている。頚椎部で前弯、胸椎部で後弯、腰椎部で前弯、仙尾骨部で後弯とゆるいS字状カーブの連続となっている。

出典

著者提供
 
  1. それぞれの脊椎骨は靱帯、椎間板、椎間関節により強固に連結されている。
  1. その配列は正面では直線状、側面では頚椎部で前弯、胸椎部で後弯、腰椎部で前弯、仙尾骨部で後弯とゆるいS字状カーブの連続となっている。
  1. 胸椎は肋骨、胸骨とともに構成される胸郭内に存在し、仙骨は腸骨、恥骨、坐骨で構成される骨盤輪の一部となっている。胸椎、仙椎の損傷は高エネルギー外傷で生じやすい。そのため同時に胸郭、骨盤輪も損傷されることが多く、内臓損傷の合併率が高い。<図表>
  1. 脊椎外傷には骨折、脱臼・亜脱臼、そして脱臼骨折がある。上位頚椎では特殊な損傷型があり、後頭骨環椎間の脱臼(多くは致命的)、環椎のジェファーソン骨折、軸椎の歯突起骨折(<図表>)、ハングマン骨折(<図表>)、そして環軸椎亜脱臼などがあり、それぞれ見逃されやすいので注意を要する。
 
脊椎損傷と脊髄損傷

脊椎の損傷が重篤となると、体幹支持性の喪失と内包する神経要素の損傷という2つの事態が生じる。
a:側面X線での第6/7頚椎レベルの脱臼像
b:MRI T2矢状断像で第6/7頚椎レベルの脊髄圧迫を認める。通常損傷部はT2矢状断像で高輝度を呈する。

出典

著者提供
 
  1. 受傷年齢は、以前は20歳代と50歳代の2峰性のピークがあったが、シートベルト着用の義務化、バイク人口や労働災害の減少などで、現在では高齢者の1峰性となっている。
  1. 脊椎損傷で生じた変形や不安定性は、治療、主に手術によって改善が期待できる。
  1. 同時に発生した脊髄損傷には有効な治療法がなく、不全損傷では部分的な回復は期待できるが、完全損傷では一般に麻痺の回復は期待できない。
 
  1. 軸椎(第2頚椎)ハングマン骨折のLevine分類(推奨度2)(参考文献:[2]
  1. 転位の少ないType Iから椎間関節の脱臼を伴うType IIIまでに分類される。
  1. 椎体間の転位を伴うType II-A, IIIでは手術治療を要し、通常軸椎-第3頚椎間で椎弓根スクリューを骨接合に用いた後方固定術が選択されることが多い。
 
軸椎(第2頚椎)ハングマン骨折のLevine分類

TypeⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類されている。TypeⅡは第2/3椎間板損傷合併の有無により、TypeⅡとTypeⅡ-A(椎間板損傷あり)にさらに分類されている。

出典

A M Levine, C C Edwards
The management of traumatic spondylolisthesis of the axis.
J Bone Joint Surg Am. 1985 Feb;67(2):217-26.
Abstract/Text Fifty-two patients with traumatic spondylolisthesis of the axis were admitted to the University of Maryland Spinal Injury Center between 1977 and 1982. There were fifteen Type-I fractures, twenty-nine Type-II fractures, three Type-IIa fractures, and five Type-III fractures. Associated neurological deficits were found in only four patients, although unassociated neurological deficits such as closed head injury were seen in eleven patients. Thirteen patients had other fractures of the cervical spine. Type-I fractures were stable injuries and were treated with collar protection. Most Type-II injuries were reduced with the patient in halo traction, and then immobilization in a halo vest was used. Type-IIa injuries, as they showed increased displacement in traction, were reduced with gentle extension and compression in a halo vest. Type-III injuries were grossly unstable and required surgical stabilization. All of the fractures healed, although the use of early halo-vest immobilization for displaced fractures resulted in significant residual deformity. The radiographic patterns of the fracture types and the resulting data on clinical stability suggested a correlation between the fracture type and the mechanism of injury. Type-I injuries resulted from a hyperextension-axial loading force; Type-II injuries, from an initial hyperextension-axial loading force followed by severe flexion; Type-IIa injuries, from flexion-distraction; and Type-III injuries, from flexion-compression.

PMID 3968113
 
  1. 軸椎(第2頚椎)歯突起骨折のAnderson分類(推奨度2)(参考文献:[3]
  1. 軸椎歯突起骨折はその骨折線の部位から3型に分類される。
  1. Type Iは歯突起上部の斜骨折で、靱帯性の不安定性が伴わなければ保存的治療が選択される。
  1. Type IIは歯突起基部、椎体との接合部での横骨折で骨癒合が得られにくく、通常手術が選択される。一般的に、前方からの中空螺子を用いた骨接合術が行われる。高齢者では骨粗鬆症がある場合には固定力が弱く、環軸椎後方固定術が選択されることが多い。
  1. Type IIIは歯突起骨折に分類されているが、椎体体部の骨折で骨癒合は得られやすく、転位が少なければ保存療法を、多ければ手術療法が選択される。
 
軸椎(第2頚椎)歯突起骨折のAnderson分類

TypeⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類されている。TypeⅡは手術適応となり、TypeⅢは症例により手術適応となる。

出典

L D Anderson, R T D'Alonzo
Fractures of the odontoid process of the axis.
J Bone Joint Surg Am. 1974 Dec;56(8):1663-74.
Abstract/Text
PMID 4434035
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 受傷機転を確認する(高エネルギー外傷か否か?)。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
湯川泰紹 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),日本臓器製薬(株),帝人ヘルスケア(株))[2024年]

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脊椎外傷、骨折

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