今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 中村昌太郎 国際医療福祉大学医学部 消化器内科学/高木病院 消化器センター

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構(JIHS)国立国府台医療センター/東京医科大学消化器内視鏡センター

著者校正/監修レビュー済:2022/12/07
参考ガイドライン:
  1. 日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン 医師用2018年1月改訂(第5版). 金原出版、2018
  1. Ruskone-Fourmestraux A, et al: EGILS consensus report. Gastric extranodal marginal zone B-cell lymphoma of MALT. Gut 60: 747-758, 2011
  1. Zucca E, et al: Gastric marginal zone lymphoma of MALT type: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol Suppl.6:vi 144-148, 2013
  1. NCCN Guidelines Version 1.2020. Extranodal Marginal Zone B-Cell Lymphoma: Gastric MALT lymphoma.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、文言を一部修正した。

概要・推奨   

  1. H. pylori陽性胃MALTリンパ腫の患者には、H. pylori除菌を第1選択の治療とすることが勧められる(推奨度1)
  1. 胃MALTリンパ腫におけるH. pylori除菌治療に対する抵抗性の予測因子として、H. pylori感染の有無、t(11;18)/BIRC3-MALT1転座、深達度などがある(推奨度1)
  1. H. pylori除菌で寛解が得られない胃MALTリンパ腫に対する二次治療は、PDの有無と病期に応じて決定すべきである(推奨度2)
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  1. 限局期(I/Ⅱ1期)のH. pylori除菌治療抵抗性胃MALTリンパ腫には放射線治療が勧められる(推奨度2)
  1. 化学療法と抗体療法は、病期にかかわらず、H. pylori除菌治療抵抗性胃MALTリンパ腫に有効である(推奨度2)
  1. 胃MALTリンパ腫に対するH. pylori除菌治療後の長期予後はきわめて良好である(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. MALTリンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)は、節外臓器に生じる粘膜関連リンパ組織の辺縁帯B細胞由来の低悪性度リンパ腫であり、消化管に好発する[1][2]
  1. 胃MALTリンパ腫は胃悪性腫瘍の1~5%、全MALTリンパ腫の30~40%、胃悪性リンパ腫の40~50%を占める[1][2][3]
  1. 胃MALTリンパ腫の約90%はHelicobacter pylori感染による慢性胃炎を基盤に発生し、15~20%で特異的な染色体転座t(11;18)(q21;q21)/ BIRC3-MALT1を認める[4]
  1. 予後はきわめて良好で、診断後5年生存率は90~96%である。原病死はまれであるが、2~5%の例でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に形質転換し、死に至る例もある[5]
 
胃MALTリンパ腫はどんな病気ですか?

出典

日本ヘリコバクター学会ホームページ 市民の方へのピロリ菌解説 [http://www.jshr.jp/citizen/ http://www.jshr.jp/citizen/]
問診・診察のポイント  
  1. 以前の胃の内視鏡・X線検査歴とH. pyloriの診断・除菌歴の有無を確認する。
  1. 症状は、胃癌と同様、非特異的で、腹痛、悪心・嘔吐、消化管出血などがみられるが、無症状の例も少なくない[2]。 B症状(発熱、体重減少、盗汗)の有無を確認する。
  1. 有症状または検診などで胃の異常が疑われる場合、鑑別疾患としてMALTリンパ腫の可能性も念頭に置き、内視鏡検査を行う。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
中村昌太郎 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),カイゲンファーマ(株))[2025年]

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胃MALTリンパ腫

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