今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 浅井浩司 東邦大学医療センター大橋病院 外科

監修: 真弓俊彦 独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院

著者校正/監修レビュー済:2024/12/11
参考ガイドライン:
  1. 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会:急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 第3版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 急性胆嚢炎の典型的な症状は、上腹部痛(右季肋部痛、心窩部痛)、悪心・嘔吐、発熱で、特に右季肋部圧痛、Murphy徴候が特徴的である。
  1. 急性胆嚢炎の診断には、特異的な血液検査所見はなく、全身の炎症所見(白血球数、CRP)をチェックする必要がある(推奨度1)
  1. 急性胆嚢炎が疑われるすべての症例に超音波検査を施行すべきである(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 急性胆嚢炎の原因の90~95%は胆嚢結石であり、結石の嵌頓による胆嚢管閉塞と胆嚢内胆汁うっ滞に引き続き、胆嚢粘膜障害が起こり、炎症性メディエーターの活性化が引き起こされる。一方、急性無石胆嚢炎は急性胆嚢炎の3.7~14%を占め、その危険因子は、手術、外傷、長期のICU滞在、感染症、熱傷や経静脈栄養などである。
  1. 日本人の胆石保有率は約10%といわれている。無症候性胆石保有者の有症状化率は、年率1~3%、生涯で約20%、特に急性胆嚢炎の発症が3.8~12%、胆管炎が0.3~1.6%との報告がある。
  1. 急性胆嚢炎の合併病態としては、壊疽性胆嚢炎・穿孔、化膿性胆嚢炎、気腫性胆嚢炎が挙げられ、これらの頻度は2~26%である。このような症例に対しては緊急手術を適応することとなる。
  1. 急性胆嚢炎の死亡率に関して、2000年以降の報告では、おおむね1%未満である。時代や地域による差を顕著に認めず、米国の最近のレビューでも0.6%と記されている。
  1. 急性胆嚢炎の死因として、以前は胆嚢摘出術後の感染性合併症(上行性胆管炎、肝膿瘍、敗血症など)が多かったが、最近では、術後早期の感染症による死亡は激減し、心筋梗塞、心不全、肺塞栓などの心血管障害や肝腎不全による死亡が相対的に増加している。
問診・診察のポイント  
  1. 急性胆嚢炎の最も典型的な症状は右季肋部痛であり(38~93%)、右季肋部痛と心窩部痛を合わせると72~93%である。次いで悪心・嘔吐が多く(約70%)、発熱は62%にみられる。38℃を超える高熱は3割程度であり、高熱の頻度は高くはない。
  1. 急性胆嚢炎では、筋性防御が約半数にみられる。右季肋部に腫瘤を触知することは多くなく、反跳痛や硬直が認められることも少ない。一方、Murphy徴候は、急性胆嚢炎の診断に対する感度は50~60%程度であり、特異度に関しては96%[1]、79%[2]と高い。なお、高齢者では感度が低い。
  1. Murphy徴候とは、「検者の手で右季肋下を圧迫した状態で患者に深吸気を促した際、疼痛により吸気が止まる所見を認めた場合陽性と判断すること」をいう。Murphyが1903年に胆石症の徴候として記載し、のちに急性胆嚢炎の徴候として用いられている。右季肋部に直接的な圧痛を認める場合はMurphy徴候の判定は困難である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
浅井浩司 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:真弓俊彦 : 特に申告事項無し[2024年]

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急性胆嚢炎

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