今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 佐々木玲奈1) 新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野

著者: 土屋淳紀2) 新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野

著者: 神田達郎3) 新潟大学医歯学総合病院魚沼地域医療教育センター 消化器内科

著者: 寺井崇二4) 新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野

監修: 持田智 埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科

著者校正/監修レビュー済:2024/12/25
参考ガイドライン:
  1. AMED HAV and HEV Study Group: Recent advances in hepatitis A virus research and clinical practice guidelines for hepatitis A virus infection in Japan. Hepatol Res. 2024 Jan;54(1):4-23. doi: 10.1111/hepr.13983. Epub 2023 Nov 15.
  1. WHO: Consolidated guidelines on person-centred viral hepatitis strategic information. 9 April 2024.
    https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/376410/9789240091313-eng.pdf?sequence=1
  1. WHO: Recommended package of interventions for HIV, viral hepatitis and STI prevention, diagnosis, treatment and care for men who have sex with men. 30 May 2024.
    https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/376921/9789240076174-eng.pdf?sequence=1
  1. WHO: Hepatitis A. 20 July 2023.
    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hepatitis-a
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. AMED HAV and HEV Study Groupによる『Recent advances in hepatitis A virus research and clinical practice guidelines for hepatitis A virus infection in Japan (2024)』に沿った内容とした。
  1. 肝外合併症の診断、重症化因子を追記した。
  1. わが国のA型肝炎有病率の低下から国内で製造される免疫グロブリン製剤中のHA抗体価が低下している。A型肝炎高浸淫地域への渡航者に免疫グロブリン製剤よりもHAVワクチン接種を推奨とした。
  1. ウイルス性肝炎の診断アプローチを変更し、A型肝炎と診断された患者は急性期に原則入院とした。

概要・推奨   

  1. A型肝炎ウイルス(HAV)の主な感染経路は糞口感染であり、汚染された飲料水や食物の摂取だけでなく性交渉を介して感染が成立する。
  1. ALT高値、ALB低値、白血球数高値のA型肝炎患者は、急性腎不全の合併に注意が必要である。
  1. 高齢者、慢性肝疾患患者、糖尿病などの基礎疾患がある者は重症化のリスクが高い。
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病態・疫学 

疾患情報(病態・疫学)  
  1. A型肝炎とはA型肝炎ウイルス(HAV)感染によって生じる急性肝炎である。
  1. HAVの主な感染経路は糞口(fecal-oral)感染であり、感染者の糞便で汚染された飲料水や食物の摂取[1]、性交渉などで感染が成立する。わが国ではウイルスに汚染されたカキなどの貝類の生食が主な感染経路であったが[2]、最近ではA型肝炎高浸淫地域での海外旅行者の感染、輸⼊⾷材が感染源となった集団感染[3]、ドラッグ使用者間の感染やMSM(men who have sex with men、男性間性交渉者)を介した感染[4]、家族内感染など[5]感染経路が多様化している。
  1. A型肝炎は2~7週間の潜伏期間ののち、約70%が38℃以上の発熱を前駆症状として発症し、食思不振、全身倦怠感、悪心・嘔吐などの非特異的症状の出現後、黄疸を呈する。1~2カ月の経過で自然軽快することが多く一般的に予後良好な疾患であるが、50歳以上では死亡率は1.8~5.4%と報告されている[6]
  1. わが国の感染症法では4類感染症に分類されており、患者(確定)、無症状病原体保有者、感染症による死亡者(確定・疑い)を診断した医師はただちに最寄りの保健所へ届け出る必要がある[7]
 
A型肝炎の分布

A型肝炎の流行状況は地域によって異なり、衛生環境の整備不十分な地域で多く発生する。

出典

CDC:Hepatitis A CDC Yellow Book 2024 https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2024/infections-diseases/hepatitis-a(2024年6月閲覧)
 
  1. 2019年の報告では、世界で年間約1億5900万人がA型肝炎に感染し、約3万9000人が死亡したと推計されている[8]。A型肝炎は糞口感染が主な感染経路であるため、患者発生数は衛生環境に相関しており、特にサハラ以南のアフリカや南アジアの一部で罹患リスクが高い。しかし、2019年には、米国で18,846人[9]、韓国で17,638人[10]の患者が報告されている。
  1. 国立感染症研究所の調査によると、わが国では2000~2017年までは年平均266例(115~502例)のA型肝炎患者が報告されていたが、2018年は届出患者数が926例に達した。この流行の原因は、2015年以降、台湾、ヨーロッパでアウトブレイクを引き起こしたRIVM-HAV16-090株(遺伝子型IA)であることが確認されており、MSM間での流行を含む男性優位の感染の拡大を認めた[11]。2019年は425例が報告されたが2020年以降は100例前後で推移し、2024年は6月2日現在で63例(暫定値)が報告されている[12]。コロナ禍でA型肝炎患者が減少したが、今後の動向が注目される。
  1. わが国では過去30年以上A型肝炎の発症数が少なくHA抗体保有率が非常に低下している。施設内の集団発生や家族内感染への注意が必要である[13]

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
佐々木玲奈 : 未申告[2024年]
神田達郎 : 未申告[2024年]
監修:持田智 : 講演料(ギリアド・サイエンシズ(株),アッヴィ合同会社,あすか製薬(株),東レ(株),大塚製薬(株),エーザイ(株))[2024年]

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