今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 柳瀬敏彦 誠和会牟田病院

監修: 平田結喜緒 公益財団法人 兵庫県予防医学協会 健康ライフプラザ

著者校正/監修レビュー済:2024/02/07
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。
  1. 典型的な原発性副腎皮質機能低下症に加えて、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を合併した症例について追記した。
  1. アジソン病は、狭義には自己免疫や結核などの後天的成因によって発症するものを指すが、先天的要因による原発性副腎皮質機能低下症も広義には含まれる。先天異常であっても発症年齢が遅く、初見では先天異常によるものか後天性のものか判別できないものもある。本症は、小児期発症の原発性副腎皮質機能低下症であるが、10代後半になっても第2次性徴の発来がないことから、X連鎖性先天性副腎低形成症(DAX-1 異常症)に気付かれた症例である。原発性副腎皮質機能低下症に遭遇した際には性腺系の異常の有無についても注意深く、診察することが重要である。

概要・推奨   

  1. アジソン病は、副腎に病変が原発する慢性副腎皮質機能低下症の病態である。
  1. 主な原因は副腎皮質が後天的に炎症、腫瘍、自己免疫、出血などによって、90%以上破壊されると起こり、副腎結核と自己免疫機序(特発性副腎萎縮)が大部分を占める。ただし、狭義にはアジソン病に含めないが、小児では先天性副腎低形成、先天性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)不応症などの先天的な成因によっても原発性副腎皮質機能低下症が起こる。
  1. 症状は易疲労感、食欲不振、体重減少、低血糖、低血圧、関節痛、色素沈着などがある(色素沈着は部分的アジソン病では必ずしも認めない場合もある)。
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  1. 健常人における1日の生理的なコルチゾール分泌量は9~11 mg/m2 であり、ハイドロコルチゾン(HC)補充療法において、この値を参考にすることが推奨される(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. アジソン病は、副腎に病変が原発する慢性副腎皮質機能低下症の病態である。
  1. 副腎皮質が通常、後天的に炎症、腫瘍、自己免疫、出血などによって、90%以上破壊されると起こり、副腎結核と自己免疫機序(特発性副腎萎縮)が大部分を占める。狭義にはアジソン病に含めないが、小児では先天性副腎低形成、先天性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)不応症などの先天的な成因によって原発性副腎皮質機能低下症が起こる。その臨床像はコルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンの総合的な脱落症状を呈する。なお、先天性副腎過形成(副腎ステロイド酵素欠損症)でも起こり得るが、コルチゾール低下以外のステロイド産生プロフィールは、病型によって異なる。
  1. 自覚症状として易疲労感、食欲不振、体重減少、低血糖、低血圧、関節痛などがある。また、ACTHの高値により多くの症例で色素沈着を来すが、部分的アジソン病では必ずしも認めない場合がある。女性では副腎アンドロゲンの低下は性毛(腋毛、恥毛)の脱落として自覚される。
  1. 一般検査所見では、低血糖、低Na血症、高K血症、貧血、低コレステロール血症、末梢血好酸球増多などを来す。
  1. 診断は、血中コルチゾール基礎値や尿中遊離コルチゾール値の低下、血中ACTH高値を確認すると同時に、ACTH刺激試験によりコルチゾール分泌予備能の低下を確認し、確定診断とする。
  1. 慢性副腎皮質機能低下症のディシジョンツリー:図アルゴリズム
  1. アジソン病は指定難病であり、重症度分類を使用し①血中コルチゾールの低下を認める、②負荷試験への反応性低下、③何らかの副腎不全症状がある、④ステロイドを定期的に補充している場合――などは、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
 
重症度分類
日常生活が障害されており、かつ以下の4項目のうち、少なくとも1項目以上を満たすものを対象とする。
1)「血中コルチゾールの低下を認める」
血中コルチゾール基礎値4μg/dL未満
2)「負荷試験への反応性低下」
迅速ACTH負荷(250μg)に対する血中コルチゾールの反応:15μg/dL未満
3)「何らかの副腎不全症状がある」
以下に示すような何らかの副腎不全症状がある。
  1. 特徴的な色素沈着
  1. 半年間で5%以上の体重減少
  1. 低血圧
  1. 脱毛
  1. 低血糖症状
  1. 消化器症状(悪心、嘔吐など)
  1. 精神症状(無気力、嗜眠、不安など)
  1. 関節痛
  1. 過去1年間に急性副腎皮質不全症状に伴う入院歴がある
4)ステロイドを定期的に補充している者
※なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要な者については、医療費助成の対象とする。
 
(出典:厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究」平成27年度総括・分担研究報告書p 63-68より引用)
病歴・診察のポイント  
  1. 病歴では、易疲労感、脱力感、悪心、嘔吐、食欲不振、体重減少(小児では発育障害)、耐寒性低下、精神症状、(無気力、嗜眠、不安、性格変化)などの症状の有無に注意する。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
柳瀬敏彦 : 未申告[2024年]
監修:平田結喜緒 : 特に申告事項無し[2024年]

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アジソン病、副腎クリーゼ

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