今日の臨床サポート

泌尿器系治療薬(薬理)

著者: 手塚優 岩手医科大学薬学部病態薬理学講座

監修: 中原 保裕 (有)ファーマシューティカルケア研究所

著者校正済:2022/08/03
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本泌尿器科学会:男性性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2020年アップデート)
  1. 日本排尿機能学会日本泌尿器科学会:女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版}
  1. 日本排尿機能学会:過活動膀胱診療ガイドライン 第2版
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 下部尿路症状は通常、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つが主な症状である。
  1. 下部尿路機能である過活動膀胱には、抗コリン薬(フラボキサート[ブラダロン]、オキシブチニン[ポラキス])やβ3受容体刺激薬(ミラベグロン[ベタニス])、頻尿治療薬(フラボキサート)が使用される。
  1. 下部尿路機能である低活動膀胱には、α1受容体遮断薬(ウラピジル[エブランチル])や下垂体後葉ホルモン製剤(バソプレシン[ピトレシン]、デスモプレシン[デスモプレシン]など)が使用される。
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  1. 前立腺肥大症の治療薬としては、選択的α1受容体遮断薬(タムスロシン[ハルナール]、シロドシン[ユリーフ]など)やPDE5阻害薬(タダラフィル[ザルティア])、5α還元酵素阻害薬(ディタステリド[アボルブ])などが使用されている。
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
手塚優 : 特に申告事項無し[2022年]
監修:中原 保裕 : 原稿料(学研メディカル秀潤社)[2022年]

改訂のポイント:
  1. 更新された診断・診療ガイドラインに沿った形に一部改訂した。

病態・疫学・診察

総論  
ポイント:
  1. 下部尿路症状は、尿の貯留(蓄尿)や排出(排尿)に関係する症状を広く意味するが、通常、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の3つが主な症状であり、その他に性交に伴う症状、骨盤臓器脱に伴う症状、生殖器・下部尿路痛、生殖器・下部尿路痛症候群および下部尿路機能障害を示唆する症候群がある。また、蓄尿障害は、さらに頻尿、尿失禁などに、排尿症状・排尿後症状は、さらに、排尿遅延、尿勢低下、尿線途絶、腹圧排尿、終末滴下、残尿感、尿閉などの症状に細かく分類される。
 
国際禁制学会による下部尿路症状の分類

下部尿路症状には、主な症状として、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状以外に、性交に伴う症状、骨盤臓器脱に伴う症状、生殖器痛、下部尿路痛、下部尿路機能障害を示唆する症状・症候群がある。

出典

img1:  The standardisation of terminology in lower urinary tract function: report from the standardisation sub-committee of the International Continence Society.
 
 Urology. 2003 Jan;61(1):37-49.
 
  1. 下部尿路症状は単一の症状を自覚する例は少なく、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状の複数の症状を自覚する例が多い。
 
複合する男性下部尿路症状

18歳以上の男性を対象にした疫学調査:多くの例で複合した下部尿路症状を有する。

出典

img1:  Prevalence, severity, and symptom bother of lower urinary tract symptoms among men in the EPIC study: impact of overactive bladder.
 
 Eur Urol. 2009 Jul;56(1):14-20. doi: 10.・・・
 
  1. 下部尿路症状は基本的には男性、女性ともに共通してみられるが、その頻度に関しては男女差を認める。欧州と北米の18歳以上の一般住民を対象に行われた疫学調査では、何らかの下部尿路症状を認めた割合は女性の66.6%、男性の62.5%であった。蓄尿症状は女性に多く(女:59.2%、男性:51.3%)、排尿症状は男性に多く認められた(男性:25.7%、女性:14.2%)。
 
各下部尿路症状の男女別有症状率

18歳以上の男女を対象にした疫学調査:蓄尿症は女性に多く、排尿症状は男性に多い。
夜間頻尿:1晩で1回以上、排尿のために起きている
頻尿:日中の排尿回数が多すぎるという自覚がある

出典

img1:  Population-based survey of urinary incontinence, overactive bladder, and other lower urinary tract symptoms in five countries: results of the EPIC study.
 
 Eur Urol. 2006 Dec;50(6):1306-14; discus・・・
 
排尿障害:
  1. 排尿症状は、蓄尿障害(頻尿、尿失禁ほか)と排出障害(排尿困難、残尿感、尿閉ほか)に大きく分けられる。
  1. 排尿に関してのトラブルは、男性の場合は尿の切れが悪くなる下部尿路閉塞(前立腺肥大症・膀胱出口部閉塞)や、下着の中に漏らしたり、トイレに間に合わない切迫性尿失禁(過活動膀胱)が多い。また、女性の場合はくしゃみや歩行などの運動により、尿意に関係なく漏れる腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁が多い。
 
 
男性下部尿路症状診療のアルゴリズム

ADLが比較的よい男性の下部尿路症状に対する基本方針を示す。

 
過活動膀胱:
  1. 過活動膀胱とは、単一の疾患ではなく、尿意切迫感を主症状とする蓄尿症状を呈する状態の総称であり、通常は頻尿や夜間頻尿を伴い、場合によっては切迫性尿失禁を伴うこともある。
 
過活動膀胱の診療アルゴリズム

過活動膀胱かどうか悩む症例に利用すると便利。

 
夜間頻尿の診療アルゴリズム

夜間頻尿の対応に困ったときに利用してください。

 
  1. 神経疾患がなく、尿検査が正常で、かつ残尿が少ない場合には、抗コリン薬などを用いて積極的に初期治療を行うことが望ましい。
  1. 男性患者では、前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の可能性をまず考慮し、まずα1遮断薬による初期治療を行う。α1遮断薬にて症状改善が不良の場合には、残尿量を確認後、抗コリン薬を少量から併用する。口腔乾燥など副作用が問題になる場合は、β3刺激薬に変更する。
残尿量が少ない(50mL未満)ことが確認された女性患者では、抗コリン薬による初期治療を行う。口腔乾燥など副作用が問題になる場合は、β3刺激薬に変更する。
 
下部尿路閉塞:
  1. 下部尿路閉塞は、前立腺腫大の有無により前立腺肥大症と膀胱出口部閉塞(BOO)に大別されるが、症状に大きな差は認められない。また、薬物療法の基本はほぼ同じで、まずα1遮断薬による初期治療を行う。
  1. 問診(I-PSSなどを参考)およびポータブル超音波装置があれば、膀胱部への腫大した前立腺の突出をみることで前立腺肥大症の診断が可能である。
  1. 前立腺特異抗原(PSA)測定あるいはPSA推移での急上昇は、前立腺癌の診断だけでなく急性前立腺炎の診断に有用である。
 
 
前立腺肥大症の治療指針

排尿困難を訴える男性例に利用すると便利。
 

 
排尿筋収縮力低下:
  1. 排尿筋収縮力低下は、子宮癌、直腸癌術後あるいは糖尿病によって起こる神経因性のものと、現在明確に定義づけられていないが、加齢による収縮力低下、あるいは薬剤によるものも考えられる。
  1. ADLの低下した高齢者では、この収縮力低下が腹圧で補助できないため残尿の増加を惹起させる。
  1. 過活動膀胱に加齢による排尿筋収縮力低下が合併すれば、収縮力低下随伴性排尿筋過反射(DHIC)と呼称される頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁があるも残尿が認められる病態を呈する。
  1. 尿閉が長期間続いた患者では、排尿筋自体のダメージが強く1回の導尿では回復しない状態となり、尿道留置カテーテルが1~4週間必要な状態になることも考慮しなければならない。
 
勃起不全:
  1. 勃起障害(erectile dysfunction、ED)とは、「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または(and/or)維持できない状態」と定義されている。
  1. 薬剤性を疑う場合には、原因となる薬剤を中止する。それ以外でEDと診断された場合の初期治療方法は、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬が第1選択薬となる。

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