今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 梶保祐子 東京大学医学部小児科学教室

監修: 渡辺博 帝京大学老人保健センター

著者校正/監修レビュー済:2023/09/13
参考ガイドライン:
  1. 日本夜尿症学会:夜尿症診療ガイドライン2021
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 著者の交代に伴い、新たに書き下ろしを行った。
  1. 内容は『夜尿症診療ガイドライン2021』をはじめとする最新の知見を反映している。

概要・推奨   

  1. 5歳以上の小児の入眠中の尿失禁のうち、1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続くものを夜尿症という。
  1. 夜尿は昼間の尿失禁など下部尿路症状を合併する非単一症候性夜尿症、下部尿路症状を伴わない単一症候性夜尿症に分類し、小学1年生の1割に単一症候性夜尿症を有する。
  1. 増悪要因や併存疾患が治療に影響するため、初診時の問診が重要である。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
定義:
  1. 国際小児禁制学会(International Children’s Continence Society:ICCS)および夜尿症ガイドライン2021では、5歳以上の小児の入眠中の間欠的な尿失禁を夜尿症(nocturnal enuresis)とし、1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続くものを指す[1]。この夜尿症の定義では、昼間尿失禁や他の下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)の有無は問わない。
  1. LUTSの有無での分類:日中のLUTSを合併する場合を非単一症候性夜尿症、合併しない場合を単一症候性夜尿症と分類する。我が国の診療では夜尿症例の1/4を非単一症候性夜尿症が占める。日中のLUTSとしては、①覚醒時の尿失禁、②尿意切迫感、③排尿困難、④排尿回数の減少(1日3回以下)、過多(1日8回以上)が挙げられる。
  1. 夜尿消失の既往による分類:過去に6ヶ月以上夜尿の消失があった症例を二次性夜尿症(10〜25%)、消失があっても6ヶ月未満である症例を一次性夜尿症(75〜90%)とする。二次性や尿症の症例では、疾患の顕在化や児の心理的要因を懸念して対応する。
 
疫学:
  1. 有病率:単一症候性夜尿症は、5歳の15%、6歳の13%、7歳の10%、8歳の7%、10歳の5%、12〜14歳の2〜3%、15歳以上の1〜2%に見られ、宿泊学習が多く行われる小学生にも多い。低年齢での男女比は2:1である。
  1. 経過:有病率は成長と共に下がるが、治療介入は治癒率を2〜3倍高める[2]。治癒せず連日の夜尿を成人期に持ち越す症例も存在し[3]、また12歳以上まで夜尿が続いた症例では成人期の夜間覚醒排尿や尿意切迫感が多く報告されている[4]
 
原因・病態:
  1. ICCSの治療指針では下記の①〜③の複合的な関与が挙げられ[5]、その他④、⑤が付加要因として考えられる。
  1. ① 睡眠から覚醒する能力
    夜尿患者は刺激に対し覚醒する閾値が高い。これは必ずしも“よく眠る”ことを示唆せず、むしろ夜尿症例では睡眠の質が悪いことが示されている[6]
  1. ② 夜間の膀胱の蓄尿能力
    治療抵抗性の夜尿症患者では背景に下部尿路の機能障害を有する可能性を考える。睡眠中の膀胱収縮の頻度や膀胱容量の変化が示唆される。
  1. ③ 夜間多尿
    睡眠中の抗利尿ホルモンの分泌低下によるほか、経口摂取の影響を受ける。
  1. ④ 発達
  1. ⑤ 遺伝的素因
    両親いずれかの夜尿の既往がある児は5〜7倍、両親ともに既往がある児は11倍夜尿を呈しやすい[7]
 
上記の原因をきたす疾患、またその他に夜尿を呈しうる疾患について下表に示す。
 
夜尿症をきたす可能性のある疾患と依存症

出典

日本夜尿症学会編:夜尿症診療ガイドライン2021、P7表4、診断と治療社、2021
問診・診察のポイント  
問診項目:
  1. ① 夜尿消失期間の有無
    一次性夜尿症か二次性夜尿症かを判断する。二次性夜尿症の場合は背景に心理的要因や他の器質的疾患に付随して発症した可能性を考え検索を行う。心理面の変化については家庭生活や学校生活について問診を行い、症状の遷延する際にはカウンセリングを併用する。
  1. ② 昼間尿失禁やLUTSの有無
    非単一症候性夜尿症に対しての介入の必要性を判断する。小児のLUTSは本人への問診では判断できないことも多い。トロント式機能障害性排尿症状スコア(dysfunctional voiding symptom score:DVSS)は本人用・保護者用の問診に有用である[8]。両足を交差させて落ち着きがなくなる、陰茎をつまんで排尿を抑制するなどの排尿我慢姿勢が見られる場合はLUTSの存在を疑う。
  1. ③ 夜尿の頻度
    1週間に4回以上の夜尿は頻回とされる。一晩に複数回排尿がある例では治療に時間を要することが多い。
  1. ④ 家族歴・既往歴
    両親の夜尿症の既往は本人の発症率を高める。尿路感染症は膀胱容量の変化を、てんかんは発作に伴う排尿を、睡眠時無呼吸は睡眠の変化をきたす。
  1. ⑤ 過去の治療歴
    既に夜尿症の治療歴がある場合には、投薬の内容や剤形、治療中の状況を確認する。
  1. ⑥ 治療に対する意思
    生活上の注意点が多いため、治療を行う確固たる意志がないと継続が難しい。特にアラーム療法では家族の協力も必要である。
  1. ⑦ 生活の確認
    生活リズムの確立は夜尿症治療にとって欠かせず、起床、夕食、入浴および就寝時間を聴取する。就寝前の排尿、夜間尿意による覚醒の有無を確認する。夕食後の多量の水分摂取、糖分や塩分を含む間食やカフェインを含有する飲料の摂取は夜間の尿量に影響する。夕飯以降の水分摂取が多い児では日中の水分摂取が少ない場合もある。
  1. ⑧ 排尿・排便習慣の確認
    便秘は夜尿を増加させるため、ブリストル式便性状スケールを使用し家族および本人と便性を確認する。排尿日誌や排便日誌をつけることで便秘や昼間尿失禁の頻度が明らかになる。夜尿が主訴だが終日の多尿が背後にある場合がある。
  1. ⑨ 発達歴
    発達遅滞、注意欠如・多動症や自閉スペクトラム症が背景にある症例では治療抵抗性を示す場合がある。
  1. ⑩ 環境
    乳児の同胞がいるため音の鳴るアラーム療法が困難な家庭環境に対しては、治療方法を考慮する。夜のトイレが怖くて実は就寝前に排尿できていない児もいるため丁寧に問診する。
 
診察:
  1. 背景疾患を示唆する所見や夜尿の増悪因子がないか確認する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
梶保祐子 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:渡辺博 : 特に申告事項無し[2024年]

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夜尿症(小児科)

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