今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 波多野将 東京大学 循環器内科/高度心不全治療センター

監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門

著者校正/監修レビュー済:2024/12/25
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
  1. 日本肺高血圧・肺循環学会/厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班:特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)診療ガイドライン
  1. 日本肺高血圧・肺循環学会/厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診療ガイドライン2022
  1. 欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS):2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. これまで「肺性心」として扱ってきた項目を新たに「肺高血圧症」に変更して解説する。
  1. 肺性心とは、「肺、肺血管または肺のガス交換を一次的に障害して肺高血圧を引き起こす疾患により、右室肥大あるいは右室不全を生じた状態」と定義されるため、左心疾患に伴う肺高血圧症は肺性心に含まれないが、本稿では左心疾患に伴う肺高血圧症も含めて解説する。
  1. 2021年にEuropean Society of Cardiology(ESC)/European Respiratory Society(ERS)の肺高血圧症の診断と治療ガイドラインが改訂されたため、この内容も含めて解説する。
  1. なお、2024年9月24日、マシテンタン・タダラフィルの配合剤(ユバンシ配合錠)が承認された。

概要・推奨   

  1. 心エコーで三尖弁逆流速度が3.4 m/sを超える場合には肺高血圧が疑われ、2.8 m/s以下の場合には肺高血圧の可能性は低い(推奨度1)
  1. 特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)、急性肺血栓塞栓症、COPDのいずれの原因による肺高血圧症においても、BNPは予後予測因子となる(推奨度2)
  1. エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ-5阻害薬、リオシグアトは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の運動耐容能を改善し、イベント発生率を低下させる(推奨度1)
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  1. 肺高血圧症の患者には在宅酸素療法が適応となる。特にCOPDによる肺高血圧症の患者では、酸素投与による目標PaO2は60 Torr(SpO2 90%)以上とする(推奨度1)
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病態・疫学 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 肺高血圧症はその成因により以下の5つの群に分けられる(<図表>[1]
  1. 第1群:肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)
  1. 第2群:左心性疾患に伴う肺高血圧症
  1. 第3群:呼吸器疾患または低酸素に伴う肺高血圧症
  1. 第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)
  1. 第5群:肺血管の直接的な障害による肺高血圧
 
肺高血圧の臨床分類

出典

Humbert M, Kovacs G, Hoeper MM, Badagliacca R, Berger RMF, Brida M, Carlsen J, Coats AJS, Escribano-Subias P, Ferrari P, Ferreira DS, Ghofrani HA, Giannakoulas G, Kiely DG, Mayer E, Meszaros G, Nagavci B, Olsson KM, Pepke-Zaba J, Quint JK, Rådegran G, Simonneau G, Sitbon O, Tonia T, Toshner M, Vachiery JL, Vonk Noordegraaf A, Delcroix M, Rosenkranz S; ESC/ERS Scientific Document Group.
2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension.
Eur Heart J. 2022 Oct 11;43(38):3618-3731. doi: 10.1093/eurheartj/ehac237.
Abstract/Text
PMID 36017548
 
  1. 肺高血圧の診断基準は、2018年にフランスのニースで開催された第6回世界肺高血圧症シンポジウムにより「平均肺動脈圧(mPAP)>20 mmHg」に変更となった。この分類は2021年に改訂された欧州循環器学会/欧州呼吸器学会(ESC/ERS)のガイドラインにも引き継がれており、今後わが国のガイドラインにおいてもこれに合わせて診断基準が変更になる見込みである[1]
  1. 「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班」による調査では、PAHの患者は2020年現在で4,230人が登録されている。全身性強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の患者には、5~10%の頻度でPAHが合併するとされている。呼吸器疾患または低酸素に伴う肺高血圧症の主要な原因疾患はCOPDであり、中等度以上のCOPDの約半数に肺高血圧症を合併するという報告もある。CTEPHの患者は、2020年現在で4,608人が登録されている。
  1. 肺高血圧症の多くは慢性の経過で起こるものであるが、急性肺血栓塞栓症のように急性の経過で起こるものもある。詳細は急性肺血栓塞栓症を参照。
  1. 肺高血圧症を来す疾患の多くは難病として厚生労働省の定めるところの特定疾患であり、特定疾患の受給者は患者自己負担額の全額もしくは一部が自己負担となる。PAHの治療薬をはじめとして、肺高血圧症の治療薬は高額であるものが多いため、患者の負担軽減のためにも基準を満たす患者に対しては本制度を受給させるようにする。肺高血圧症に関する特定疾患については難病情報センターのホームページを参照のこと。

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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
波多野将 : 講演料(ヤンセンファーマ(株))[2024年]
監修:今井靖 : 未申告[2024年]

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肺高血圧症

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