今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 松永寿人 兵庫医科大学 精神科

監修: 上島国利 昭和大学

著者校正/監修レビュー済:2022/03/30
参考ガイドライン:
日本不安症学会/日本神経精神薬理学会:社会不安症の診療ガイドライン 第1版(http://www.jsnp-org.jp/csrinfo/img/sad_guideline.pdf)
 
患者向け説明資料

改訂のポイント:「社会不安症の診療ガイドライン 第1版」に基づき治療について改訂を行った。

概要・推奨   

  1. 社交不安障害(social anxiety disorder、 SAD)に対しては、国内で使用可能な4つのSSRI (フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム)のいずれも、海外における多くの二重盲検比較試験において、プラセボに比べ有意な有効性が検証されているが、エビデンスの確実性は低く、弱い推奨となっている(推奨度2)。この中でわが国における適用を有するのは、フルボキサミンとパロキセチン、そしてエスシタロプラムであり、これらの薬剤が第一選択に提案されている。なおこれらは、添付文書に記載されている副作用の出現に注意し用いるべきとされている。
  1. SADに対する精神療法(心理的介入)では、SADに特化された個人療法による認知行動療法(cognitive behavioral therapy、CBT)を、これに習熟した治療者が一連の手順に基づいて行うことが、弱い推奨として提案されている(推奨度2)。もし患者が対面でのCBTを希望しない場合、CBTに基づくサポートつきのセルフヘルプを提案することが、弱く推奨されている(推奨度2)
  1. 一方、成人SAD患者に対する薬物療法と CBTの併用の実施に関しては、この有効性を支持するエビデンスは十分ではなく、それをする/しないに関しての推奨はなされていない。

病態・疫学・診察 

疾患情報  
  1. 社交不安障害(social anxiety disorder、 SAD)の中核的臨床像は、「恥ずかしい思いをするかもしれない社会的状況、または行為をする状況に対する顕著で持続的な恐怖」である。
  1. ICD-10では、「比較的少人数の集団内で、他の人々から注視される恐れ」が特徴とされる。
  1. 恐怖の対象は、人前で「話をする」、「字を書く」、「スポーツや楽器の演奏をする」など「行為をする状況」、あるいは「パーティーや結婚式に出席する」、「よく知らない人に会う」などの対人交流状況に大別される。
  1. このような状況への曝露により、ほとんどの場合は不安反応、例えば動悸、振戦、発汗、紅潮などが生じて、結果的にその状況を恐れ回避する。例えば手指の振戦などで恥をかくことを恐れ、人前での食事や書字などを避ける。
  1. 社交恐怖は、「あがり症」あるいは「内気」などの性格傾向とは異なり、恐怖や回避、またはその状況に直面する予期不安などによって、毎日の生活や職業的機能、社会生活などに著しい障害を来している、またはその恐怖による苦痛が顕著な場合においてのみ診断される。
  1. 成人においては、その恐怖の過剰性や不合理性を認識していることが必要である。
  1. このような恐怖が広範な社会的状況にみられ、通常は人前で行為をする状況、そして対人交流を持つ状況のいずれにも恐怖を感じている。
  1. パフォーマンス限局型の場合、恐怖する状況が、話したり演技をしたりなど、人前での行為状況に限定される。
  1. 回避性パーソナリティ障害との関連が強く、しばしば両者が併存する[1]
  1. パニック障害(広場恐怖を含む)、分離不安障害、広汎性発達障害などを鑑別する。
  1. 一般人口中における生涯有病率は、わが国では1.4%程度、欧米では2~12%とされている。
  1. 典型的な社交不安障害は、思春期、遅くても青年期までに発症する。
問診・診察のポイント  
  1. SADは、その有病率に比べ、受診率の低さが特徴である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
松永寿人 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:上島国利 : 特に申告事項無し[2024年]

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