今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 三木俊史 近森会近森病院 救命救急センター

監修: 箕輪良行 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

著者校正/監修レビュー済:2022/06/08
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、概要・推奨を追加した。

概要・推奨   

  1. フグの摂取歴があり、口唇周囲や四肢遠位端のしびれ感や全身の弛緩性麻痺などテトロドトキシン毒性の臨床症状を認めれば、フグ中毒を疑う(推奨度2)
  1. 特別な抗毒素はなく、治療は支持療法であり、症候性徐脈にはアトロピンを用い、低血圧には輸液と昇圧薬を用いる(推奨度2)
  1. フグ中毒の死因のほとんどは、呼吸筋麻痺による換気不全であり、呼吸困難または呼吸停止に対して、気管挿管し、人工呼吸器管理を行う(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. フグ中毒はテトロドトキシンを含有しているフグ目の魚を摂取することによって生じ、海洋生物による致死的な中毒の代表である。
  1. フグを好んで摂取する日本での報告が多く、なかでも西日本を中心に発生しており、フグが旬である冬季に多発している。
  1. フグ中毒の発生原因の第1位は、いわゆる素人調理によるもので、自分で釣ったフグや内臓を処理していないフグを譲り受け、自宅で調理・摂取することが中毒原因となっている事例が多い。
 
  1. 典型的症例集:症例1
  1. 病歴:50歳代の男性、夕食に友人が釣ってきたフグの身を調理し食べたところ、摂取後6時間で口唇と四肢のしびれが出現したため来院。
  1. 診察:診察時は、意識は清明でバイタルも安定していたが、四肢の筋力低下と軽度の呼吸苦あり。
  1. 診断のためのテストとその結果:フグの摂取歴と臨床所見よりフグ中毒と診断。採血・動脈血ガスでは著変なし。血清のテトロドトキシンを提出したが検出されなかった。
  1. 治療:集中治療室へ入室し、臨床症状を経時的にモニターしながら全身管理をした。
  1. 転帰:入院後、麻痺・呼吸不全の進行はなく、次第に改善し、3日後に退院となる。
  1. コメント:フグの摂取歴を含む問診と身体所見からフグ中毒を疑えば、入院にて経過をみる。Grade2以上の臨床症状があれば、集中治療室へ入室し、モニター管理をしながら経時的に臨床症状の経過をみる。この症例では、診断確定のために尿検体でもテトロドトキシンを分析するべきであった。
 
  1. テトロドトキシンの濃度は魚の種類、魚の部位、季節、産地、個体によって大きく異なる。肝臓・卵巣・腸・皮でテトロドトキシンの濃度は高い。
  1. テトロドトキシンはNa+チャネルの外孔をブロックし、神経細胞の活動電位の発生および興奮伝導を抑制し、中枢および末梢神経系に対して作用する[2]
  1. フグ中毒の死因のほとんどは、呼吸筋麻痺による換気不全である。
問診・診察のポイント  
  1. フグの摂取歴、摂取量、部位などを確認。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
三木俊史 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:箕輪良行 : 特に申告事項無し[2024年]

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フグ中毒

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