今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 萩原將太郎 筑波大学附属水戸地域医療教育センター

監修: 徳田安春 一般社団法人 群星沖縄臨床研修センター

著者校正/監修レビュー済:2024/11/13
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、脾摘出後における免疫抑制に対するワクチン接種について、CDCガイドライン2023年改訂版に準拠した。また症例報告として、典型例:発熱と白血球増加、脾腫を呈した若年女性、難渋例:脾腫を伴う不明熱の1例、を追記した。

概要・推奨   

  1. 若年者では健康者でも脾臓を触知することがある。
  1. 悪性腫瘍やリーシュマニア、結核などの感染に対する診断に脾臓の針生検が有用である(推奨度2)
  1. 腹部エコーは脾腫の評価に有用である(推奨度1)。さまざまなsplenic indexが開発され、脾臓の大きさを記録し評価するために用いられている。
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  1. 脾機能を評価する検査として、99mTc-スズコロイド、99mTc-フチン酸などを用いたシンチグラムがある。副脾の有無を調べる際にも用いられる。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 脾臓は巨大な網内系臓器であり、老化・奇形赤血球の除去、抗体産生、細菌や抗体付着血球の除去を司る。
  1. 脾臓の大きさは年齢、体格により異なる。一般に50~250 gであり、年齢とともに質量は減少する。
  1. 横隔膜と肋骨に囲まれる骨格内にあり、通常は触知しないが、大学生を対象とした調査で3%の健常者で無症候性の脾腫を認めた報告がある。
  1. ニューギニアのある村の調査では村民の62%に脾腫を認めたとの報告もある。マラリアなどの感染症、サラセミアなど遺伝疾患などの関連が示唆され、地域により脾腫の頻度は異なる。
  1. 脾腫の原因は、大きく4つある。脾機能の亢進、異常な血流の増加、異常蛋白や脂質などの蓄積、良性・悪性細胞の浸潤である。
 
  1. 若年者では健康者でも脾臓を触知することがある。
  1. まとめ:年齢とともに脾臓の大きさは減少する。触診で脾臓を触知することは通常ないとされているが、若年者では、健康であってもまれに脾臓を触知することがある。
  1. 研究事例: Ebaughらは、大学の新入生を対象に脾腫の有無を調査し、2.9%で脾臓を触知した[1]。その後、10年間フォローを行ったが、悪性腫瘍に進展した者はいなかった。
  1. 結論:若年者で触知できる脾臓は、必ずしも病的ではない。
 
  1. 薬剤によっては脾腫を来すこともある。
  1. まとめ:インターロイキン2やG-CSFなどのサイトカイン、フェニトインなどの薬剤に対する反応として脾腫を来すことがある。
  1. 研究事例:G-CSFは化学療法後の好中球回復を促進させる働きがあるが、末梢血幹細胞採取に用いる高用量では脾腫を来すことがあり、時に脾破裂を伴うことが報告されている[2]。また、抗けいれん剤に対する過敏反応により脾腫が出現することがあり、フェニトイン投与により脾破裂を来した報告がある[3]
  1. 結論:G-CSFやインターロイキン2などのサイトカインやフェニトインなど抗けいれん薬を使用している患者では脾腫を来すことがあるので留意する。
問診・診察のポイント  
  1. 脾腫は多くの場合、無症状であり、腹部の診察や画像診断で判明することが多い。急速な脾臓腫脹や巨大脾腫では、左上腹部の痛みや圧迫感、早期満腹感などの症状を自覚する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
萩原將太郎 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:徳田安春 : 特に申告事項無し[2024年]

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