今日の臨床サポート

慢性下肢動脈閉塞

著者: 宮田哲郎 国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター

監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門

著者校正済:2022/03/16
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. Global vascular guidelines on the management of chronic limb-threatening ischemia (2019)
  1. 2017 ESC Guidelines on the Diagnosis and Treatment of Peripheral Arterial Diseases, in collaboration with the European Society for Vascular Surgery (2017)
  1. Society for Vascular Surgery practice guidelines for atherosclerotic occlusive disease of the lower extremities: Management of asymptomatic disease and claudication (2015)
  1. 日本循環器学会:末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)(2015)
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 足部で脈が触れず、慢性下肢動脈閉塞を疑った場合は、足関節上腕血圧比(ABIが0.9以下で主幹動脈の閉塞と診断する。(推奨度1、RsJG)
  1. 糖尿病患者や透析患者では、動脈壁の石灰化のためABIが高値となる場合があり、石灰化の影響を受けづらいTBIも測定し、0.6~0.7以下で主幹動脈の閉塞を疑う。(推奨度1、RsJG)
  1. 間歇性跛行の患者に対しては、トレッドミル歩行負荷検査を実施し、跛行出現距離、最大歩行距離、歩行後のABIの低下を測定して跛行の重症度を評価する。(推奨度2、RsJG)
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  1. 足部の潰瘍・壊死の患者では、ABI、足趾上腕血圧比(TBI)測定に加え、皮膚血流の指標である皮膚灌流圧(SPP)、経皮酸素分圧(TcPO2)を測定する。(推奨度1、RsJG)
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
宮田哲郎 : 研究費・助成金など(バイエル薬品株式会社)[2022年]
監修:今井靖 : 講演料(第一三共株式会社)[2022年]

改訂のポイント:
  1. 慢性下肢動脈閉塞の診断に関する解説を中心に追記した。

病態・疫学・診察

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 慢性下肢動脈閉塞では、生体の代償機構として、主幹動脈閉塞部位の血流を補う側副血行路が形成される。閉塞状況(広範囲の閉塞、多発閉塞、末梢の閉塞、比較的短時間の閉塞)や、患者の活動状況により、側副血行路が必要な血流を代償できない場合、「間歇性跛行」、「安静時疼痛」、「潰瘍・壊死」といった下肢虚血症状が出現する。
  1. 主幹動脈が閉塞していても虚血症状がない「無症状」患者は、有症状患者数の2~3倍とされている。活動性が低いために症状がない場合もあり、必ずしも無症状だから虚血が軽度というわけではない。
  1. 「間歇性跛行」では、歩行運動により増加する筋肉の血液需要に、側副血行路を介する供給が追いつかない結果、歩行で使用する腓腹部や殿部の筋肉に疼痛が生じる。休息で血液供給が満たされると症状は軽快するが、運動再開で症状の再燃を繰り返す。
  1. 「安静時疼痛」、「潰瘍・壊死」では、虚血に強い臓器である皮膚に障害が生じるほどの高度虚血となった結果、下肢末端に疼痛、潰瘍、壊死が生じる。虚血に加え、感染も病態の増悪因子となる。最近、下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染といった肢切断リスクを持ち、治療介入が必要な下肢の総称として、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI: Chronic Limb-Threatening Ischemia)の概念が提唱された。
  1. 軽度の間歇性跛行が徐々に増悪して潰瘍・壊死となる場合と、無症状のまま虚血が進行し、外傷などをきっかけに潰瘍・壊死が出現する場合とがある。後者は患者の活動性が低い場合が多い。
  1. 慢性下肢動脈閉塞の原因疾患で最も多いのは、閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)である。それ以外には、閉塞性血栓性血管炎(TAO: thromboangiitis obliterans)、膝窩動脈捕捉症候群、膝窩動脈外膜嚢腫、慢性塞栓症、ベーチェット病、膠原病などが原因となる。
  1. ASOの背景には全身の動脈硬化症があり、日本人ASO患者の約3割に虚血性心疾患を、約2割に脳血管障害を合併する結果、患者の約4割には虚血性心疾患と脳血管障害のいずれかの合併を認める。このため、動脈硬化症に対して未治療のASO患者の生命予後は不良である。
問診・診察のポイント  
  1. 慢性下肢動脈閉塞患者は、間歇性跛行および足、足趾のしびれ、疼痛、色調変化、潰瘍、壊死を主訴に受診する。

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