今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 長田乾 横浜総合病院 横浜市認知症疾患医療センター

監修: 高橋裕秀 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科

著者校正/監修レビュー済:2023/03/08
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2017
  1. 日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2021
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. ガイドラインを参考に実臨床に即した記載内容に修正
  1. 画像診断に関わる情報を追加

概要・推奨   

  1. 認知症を疑われる患者が受診した場合に、鑑別診断として血管性認知症を常に考えなければならない(推奨度1)
  1. 血管性認知障害は「治療可能な認知症(treatable dementia)」とみなされ、脳血管障害の再発予防は、進行抑制につながる(推奨度1)
  1. 高齢者では、脳血管障害とアルツハイマー病の病理が併存することが多く、「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」と呼ばれる(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

血管性認知症の定義・診断基準  
  1. 血管性認知症は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症とともに、認知症の主たる原因疾患である。
  1. 血管性認知症は、脳出血、くも膜下出血、ラクナ梗塞、アテローマ血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、脳の低灌流などの脳血管障害を基盤とする認知症の総称である。
 

出典

著者提供
 

脳卒中発症後3カ月以内に認知機能が低下した場合は典型的な脳卒中後認知症(血管性認知症)と診断される(図A)。脳卒中再発のたびに認知機能が段階的に低下する場合も脳卒中後認知症(血管性認知症)と診断される(図B)。脳卒中イベントなしに認知機能が緩徐に低下し、脳卒中を契機に認知機能がさらに低下した場合は脳卒中前認知症、すなわちアルツハイマー型認知症に脳卒中を合併した病態(脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症)と見なされる(図C)。脳卒中イベントなしに緩徐進行性の経過で認知機能が低下し、偶々撮像したMRIなどで無症候性脳梗塞性脳血管病変を指摘された場合も脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症と診断される(図D)。

出典

著者提供
 
  1. NINDS-AIRENの診断基準では、血管性認知症は、①認知症の存在、②脳血管障害の存在、③認知症と脳血管障害との間に時間的関連性が証明される、の3点から診断される。
  1. NINDS-AIRENの診断基準によれば、血管性認知症は、その成因や病巣の分布から、①多発性皮質梗塞に起因する多発梗塞性認知症、②多発性ラクナ梗塞など小血管病変による認知症、③低灌流に起因する認知症、④脳出血による認知症、さらに⑤戦略的単一病変による血管性認知症に分類される。
 

出典

著者提供
 
  1. 英国のKalariaらによると、血管性認知症はその成因から、大血管病変に起因する血管性認知症、小血管病変に起因する血管性認知症、戦略的単一病変に起因する血管性認知症、低灌流に起因する血管性認知症、脳出血に起因する血管性認知症、さらにアルツハイマー病の病理が併存する血管性認知症に分類される。このうちアルツハイマー病の病理が併存する血管性認知症は、見方を変えると脳血管障害を有するアルツハイマー型認知症と共通する病態を示唆している。
 

出典

著者提供
 
  1. 純粋な血管性認知症にはコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンの保険適応はないが、「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」という臨床診断であれば、コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンの保険適応となる。
  1. カナダのHachinskiらが提唱する「血管性認知障害vascular cognitive impairment(VCI)」は、血管性認知症をより広く捉えて、脳卒中の脳血管障害を基盤として、認知症には至らない認知機能の軽度低下から重症の血管性認知症までを包含する概念を意味する場合と、アルツハイマー型認知症に対する軽度認知障害(MCI)のように、脳血管障害に起因して認知機能は低下しているものの日常生活に困難を認めない状態を意味する場合がある。
  1. AHA/ASAのガイドライン(2011)では、脳血管障害の一次予防は血管性認知症の発症予防につながることを重視して、脳血管障害の発症あるいは認知症の前段階を含めた包括的概念として「血管性認知障害(VCI)」の名称を提唱されている。
  1. わが国ではかつて脳卒中が年余にわたり死因の位置を占めたことなどから、欧米とは異なり、血管性認知症が認知症の最大の原因と漠然と考えられていたが、複数の疫学的調査の結果から、認知症の原因疾患ではアルツハイマー型認知症が最も多いことが明らかになった。
  1. 高齢で脳卒中に罹患するほど、脳卒中後認知症(血管性認知症)は多くなる傾向にある。わが国ではアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症の原因疾患といわれているが、血管性認知症の概念の不確実性から、正確な頻度は不明である。しかしながら、高齢になるにしたがって血管性認知症の罹病率や発症頻度が増加することは確かである(推奨度3C)。(参考文献:[1][2][3]
  1. 認知症を認められ画像診断で脳血管障害が証明されると安易に血管性認知症と診断されがちである。しかし、とくに高齢者では、アルツハイマー病やレビー小体病などが併存することが多く、純粋な血管性認知症と診断されることは意外と少ない。また、病理学的に脳血管障害の存在を証明することができるが、生前に認知症を呈したか否かを病理学的所見から判定することは困難である(推奨度3O)
  1. オーストリアのJellingerは、脳血管病変の多様性、原因になる因子の複雑さから、病理学的所見のみから血管性認知症を診断することは難しいと述べている[1]
 

出典

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  1. 近年、血管性認知症とアルツハイマー型認知症との連続性が指摘されている。とくに高齢者では、脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症の占める割合が高いとされている。
  1. 血管性認知症は脳血管障害に起因し、アルツハイマー病は変性疾患という病態の対比から、かつては認知症の原因疾患の両極に存在すると見なされ、血管性認知症かアルツハイマー病か二者択一の鑑別診断が行われ、脳卒中の既往や画像上で脳血管病変を有すると半ば自動的に血管性認知症と診断されていたために、血管性認知症が過大に診断される傾向にあった。ところが高血圧、糖尿病、脂質異常症、鬱血性心不全など、血管性認知症とアルツハイマー病の共通の危険因子が存在し、病理学的には、とりわけ高齢者では、脳血管病変とアルツハイマー病の病理所見が併存することも明らかにされた。(参考文献:[3][4][5][6][7][8]
  1. 米国で修道女を対象に行われた前向き臨床病理学的研究では、アルツハイマー病の病理が存在しないときは、MMSEの平均点は、脳梗塞を有しない群で26/30点、脳梗塞を有する群で25/30点であったが、アルツハイマー病の病理があると、MMSEの平均点は、脳梗塞を有しない群で15/30点であったのに対して、脳梗塞を有する群では3/30点であったことから、アルツハイマー型認知症の臨床像に脳梗塞の存在が関与している可能性を示唆するものである[9]
  1. 病理学的にアルツハイマー型認知症と診断された患者では、脳血管病変(無症候性脳梗塞、大脳白質虚血病変を含む)の合併が有意に高い。逆に、臨床的に血管性認知症と診断された患者の50%以上でアルツハイマー型認知症病変の併存が明らかになっている。
  1. 頭部MRI T2*画像で大脳皮質・皮質下に多数の無信号病変を呈する場合は、脳血管にアミロイドが沈着する脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy: CAA)の病態を反映しており、アルツハイマー病の病理が併存している可能性が高く、臨床的には皮質下出血を繰り返すことが多い。
 
脳アミロイド血管症の頭部MRI T2*所見

出典

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  1. かつては画像上で脳血管障害を呈するアルツハイマー型認知症をすべて混合型認知症(mixed dementia)と診断する専門家や、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の臨床的特徴を併せ持つときのみに混合性認知症と診断する専門家が存在し、混合型認知症という概念の定義が曖昧であったことから、最近ではこの混合型認知症という診断名を積極的に使用しない風潮がみられる。例えば、NINDS-AIRENの診断基準では、このような病態は「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症」と呼称すべきと記載している。しかしながら、高齢者では、脳血管障害にアルツハイマー型認知症病変をはじめとする変性疾患の合併が多いことから、脳血管障害と変性疾患の相互連関が注目されている。(参考文献:[10][11]
 

出典

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  1. アルツハイマー病では、アミロイドβのオリゴマーや神経原線維変化、脳内の炎症などが神経細胞死を促進させることに加えて、アセチルコリン系の機能低下により血管調節機能が障害され血管収縮などが惹起されることが明らかにされている。一方、脳血管障害は、低灌流や脳虚血が神経細胞へのエネルギー輸送を障害することに加えてセクレターゼ活性やアミロイドβの排泄障害も引き起こすことから、脳血管障害とアルツハイマー病の病態が相乗的に作用して認知症を進行させると推察されている。

診断方針 

血管性認知症の臨床診断  
  1. アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などとの鑑別診断では、急性発症や段階的進行を呈し、画像診断で脳血管病変を確認できれば、血管性認知症の可能性が高い。また、潜在性発症や緩徐進行性の経過を示しても、実行機能障害が目立つ場合には、低灌流や小血管病に起因する血管性認知症の可能性がある。
 

出典

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  1. 脳卒中発症後に認知機能低下を呈する脳卒中後認知症では、病変部位によって失語症や半側空間無視などの巣症状を呈する。
 

出典

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  1. 左優位半球の前頭葉損傷では、発動性低下、超皮質性運動失語、鬱気分、運動失語(ブローカ失語)、実行機能障害などの神経脱落症状を呈し、側頭葉損傷では、感覚失語(ウエルニッケ失語)や伝導失語を呈する。左優位半球の頭頂葉損傷では、ゲルストマン症候群に含まれる失読・失書、左右失認、手指失認、失計算、さらに観念運動失行などを呈し、後頭葉損傷では、右同名性半盲、純粋失読、色彩失認などを呈する。
  1. 一方、右非優位半球の前頭葉損傷では、発動性低下、無頓着、感情の平坦化、片麻痺の否認、運動維持困難症、運動無視などの症状を呈し、側頭葉損傷では、失音楽、環境音などに対する聴覚失認、病態失認などの症状を呈する。右非優位半球の頭頂葉損傷では、左半側空間無視、構成障害、着衣失行などの症状を呈し、後頭葉損傷では、左同名性半盲、相貌失認、地誌的失見当識などの症状を呈する。
  1. 病初期からの麻痺性構音障害、歩行障害、尿失禁などの神経脱落症状が、アルツハイマー型認知症との鑑別点になることが多い。
  1. 高齢の血管性認知症患者の半数近くで、アルツハイマー病の病理が併存することが明らかにされている。また、高齢のアルツハイマー型認知症患者の多くに脳血管障害の存在が証明されることから、「脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症(AD with CVD)」という臨床診断が広く用いられている。したがって、脳血管障害を呈する認知症がすべて純粋な血管性認知症という訳ではない。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
長田乾 : 未申告[2024年]
監修:高橋裕秀 : 特に申告事項無し[2024年]

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