今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 天野祐二 浦和消化器内視鏡クリニックグループ

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正/監修レビュー済:2024/11/27
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「概要・推奨」の一部の文言を訂正した。
  1. 「疾患情報」を一部修正し、配置を変更した。
  1. 「治療」項目の一部に追記した。

概要・推奨   

  1. 胃アニサキス症を疑う症例には、上部消化管内視鏡検査および内視鏡的虫体摘出術が推奨される(推奨度2)
  1. 急性胃アニサキス症の内視鏡所見は非常に多彩である。NBIなどの画像強調内視鏡観察は刺入虫体の視認性を向上させる(推奨度2)
  1. 胃アニサキス症で出現する蕁麻疹は再感染例に多い。一般にサバ蕁麻疹はアニサキス幼虫が原因である(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 胃アニサキス症とは、多くの海産魚類に寄生するAnisakis 属またはAnisakis 亜科に属するPseudoterranova 属の幼虫が、経口的に侵入し胃壁へ刺入することにより急性のアレルギー反応を惹起する寄生虫疾患である。
  1. 待機宿主といわれるサバ、イカ、イワシ、アジ、サケ、カツオ、タラなどに寄生したアニサキス第3期幼虫の生食により、多くは4~6時間後に発症する。アニサキス症を引き起こす種は主にAnisakis simplex(アニサキスⅠ型)、Anisakis physeteris(アニサキスⅡ型)およびPseudoterranova Decipiens の3種である。アニサキス症の原因として最も多いのはアニサキスⅠ型幼虫で、Ⅰ型はさらにAnisakis pegreffiiAnisakis simplex sensu strictoおよびAnisakis simplex Cの3種類に分類されている。
  1. サバの体内には、日本海産ではAnisakis pegreffii が、太平洋産ではAnisakis simplex sensu stricto が多いが、国内のアニサキス感染者100名より摘出した虫体の99%が後者であった。内臓から筋肉部位(刺身の部分)へのアニサキスの移行率は、Anisakis simplex sensu stricto のほうがAnisakis pegreffii と比較して100倍以上高いことが高感染率の原因といわれている。
  1. 胃アニサキス症はluminal typeまたは緩和型、invasive typeまたは激症型に病型分類される。一般に後者は即時型過敏反応による消化管の攣縮を伴うもので、あらかじめアニサキス抗原で感作されているか、再感染の場合である。一方、激症型の症状としては、悪心・嘔吐と上腹部痛が主体であり、放置すると数日間続く。
  1. 国際登録されているAnisakis simplex の9種類のアレルゲン(Ani s 1~9)のうち、主なものはAni s 1とAni s 7であり、それぞれに対するIgE抗体の検索はアニサキス感染症診断に有用である(保険適用はない)[1][2]。しかしながら、Ani s 1は胃アニサキス症に特異的であるのに対して、Ani s 7はアニサキス感作後の蕁麻疹に特異的であるという違いを持つ[3]
  1. 近年では、海産魚類生食という食文化の流行もあって、特に急性胃アニサキス症はきわめて多くなってきている。内視鏡治療で簡単に治癒することもあって、本例が届出報告されることは少なくなったが[4]、国立感染症研究所によると、近年の症例数は年間7,000例強と試算されている。ただし、本症は食品衛生法により届け出が必須の食中毒と定義されている。
  1. 予防としては生食を避ける、可能な限り新鮮なうちに内臓を処理するなどである。一般に60℃で1分間の過熱、または-20℃以下24時間の冷凍で幼虫を死滅させることができる。
問診・診察のポイント  
  1. 症状が出現した直近の食事内容をよく聞き、該当する待機宿主の生食がなかったどうか確認する。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
天野祐二 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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胃アニサキス症

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