今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 渡邊雅彦 茨城大学保健管理センター

監修: 庄司進一 筑波大学

著者校正/監修レビュー済:2021/05/26
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン 2020
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 日本神経学会「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン2020」に基づき、本症の診断と治療に関して改訂を行った。
  1. 上記ガイドラインにおいて「推奨グレード1」に指定されたアイテムは網羅した。
  1. 挙児希望を有する患者への遺伝カウンセリング、出生前診断、着床前診断については遺伝カウンセリングの十分な体制が整った専門機関であり、かつ産婦人科特殊手技に対応できる施設で十分な準備をして実施されるべき内容なので詳細はあえて記載しなかった。

概要・推奨   

  1. 筋強直性ジストロフィー患者におけるミオトニア症状に対して、メキシレチン1回150mgもしくは200mg、1日3回の投与は有効かつ十分な忍容性が認められる。
  1. 筋強直性ジストロフィータイプ1(DM1)患者の日中の過度の眠気に対して、モダニフィルは有用とはいえない(推奨度3)
  1. 嚥下障害の合併頻度は高いが、自覚されてないことが多い。窒息や肺炎の原因となりうるため、定期的に嚥下機能を評価する(推奨度1、エビデンスランクOJ)
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病態・疫学・診察 

疾患のポイント  
筋強直性ジストロフィー症:
  1. 筋強直性ジストロフィー症は筋ジストロフィー症であり、その他のミオトニア症候群は筋ジストロフィー症ではない。前者は筋萎縮を呈し、後者は多く筋肥大を呈する。両者が鑑別診断の対象となることは実地臨床上ほとんどない。本稿は筋強直性ジストロフィー症の診断と治療について論じる。
  1. 筋強直性ジストロフィー症は、ミオトニアと進行性の筋萎縮が確認できれば、診断をほぼ確定できる。ミオトニアは把握性ミオトニアと叩打性ミオトニアを診察することにより検出する。病歴聴取のみでは不十分である。さらに、その特徴的な筋萎縮のパターンが捉えられれば、より診断は明らかになる。すなわち顔面筋、咬筋、前部頚部筋、四肢遠位筋の組み合わせで障害される。成人発症の遺伝性ミオパチーでこの組み合わせにより筋萎縮を生ずる疾患はない。
  1. 針筋電図検査は特徴的なミオトニア放電を検出し、合わせて筋原性変化を確認できる。したがって非ジストロフィー性のミオトニア症候群との鑑別や、ミオトニア以外の筋硬直との鑑別に役に立つ。
  1. 1型の筋強直性ジストロフィー(DM1)の平均の発症年齢は26.1歳、平均の診断時年齢は33.4歳であった。したがって平均の診断の遅れは7.3年であった。
 
  1. 1型の筋強直性ジストロフィー(DM1)の平均の発症年齢は26.1歳、平均の診断時年齢は33.4歳であった。したがって平均の診断の遅れは7.3年であった(エビデンスランクO。(参考文献:[1]
  1. 筋強直性ジストロフィーは成人において最も頻度の高い筋ジストロフィー症であるが、その発症年齢には大きなばらつきがあり、事実上いかなる年齢においても発症し得る、またその臨床症候も多彩で早期診断を困難にしている可能性がある。
  1. 本研究は米国で行われた多施設共同研究で679例のDM1患者ならびに135例のDM2患者について、発症年齢、診断時年齢、診断の遅れ、初発症状などについて調査された。結果、DM1においては平均7.3年、DM2に至っては平均14.4年の診断の遅れが観察された。あわせて患者が発端者であっても、非発端者であっても診断の遅れにほとんど差がないこと、また必ずしも必要のない侵襲的な検査が高頻度に行われている実態も明らかにされた。
 
  1. 556例のDM1患者の調査では、嚥下障害は48.2%に合併しており、ミオトニーが無い患者に比して、中等度もしくは高度のミオトニーがある患者では嚥下障害の合併の頻度が高かった[2](推奨度1、エビデンスランクC)
  1. 本研究は英国において患者が自発的にオンラインで自身の臨床データを登録することにより、筋強直性ジストロフィー症の臨床研究を加速化することを目的として開始された。併せて、医師、看護師、訓練士がより詳細な臨床ならびに遺伝学的データを登録した。
 
把握性ミオトニアと叩打性ミオトニア:
  1. なお、把握性ミオトニアと叩打性ミオトニアはミオトニアの診察所見として代表的なものである。
  1. 把握性ミオトニアは、患者に物を強く握らせるとそれを放してくださいと指示してもすぐには手を緩められないため、物を放すことができない現象で、診察室で容易に確認できるし、病歴として語られることもある。
  1. 叩打ミオトニアは筋腹を直接打突することにより、持続的筋収縮を誘発するもので、大概、母指球を打鍵器で打突することにより検出される。典型的には母指球を打突後、ゆっくりした持続性(数秒間)の母指の内転が誘発される。舌圧子で横断的に舌を挟み、打鍵器で叩くことにより、分節的なミオトニア筋収縮が起こり舌が円周状に収縮する「ナプキンリングサイン」が観察されることがある。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 問診の際に重要なポイントは2つある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
渡邊雅彦 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:庄司進一 : 特に申告事項無し[2024年]

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筋強直症候群(筋強直性ジストロフィー、ミオトニア)

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