今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 内門大丈 医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南

監修: 市橋亮一 総合在宅医療クリニック

著者校正/監修レビュー済:2025/10/01
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン 2017年版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. レカネマブ(レケンビ)、ドナネマブ(ケサンラ)といった抗アミロイドβ抗体治療薬が日本国内でも実臨床導入され、軽度認知障害(MCI)期からの治療介入が注目されている。
  1. ICD-11のコード(6D8)に基づく神経認知障害群の位置づけを明記した。
  1. 2024年にブレクスピプラゾール(レキサルティ)がアルツハイマー型認知症(AD)に伴うアジテーション(焦燥感、易刺激性、興奮に起因する過活動や攻撃的言動)に対する適応を取得している。
  1. 認知症終末期ケアにおける対話と意思決定を臨床現場視点で整理した。
  1. 保険点数の改正に伴い、点数表を更新した。

概要・推奨   

病態
  1. 認知症は、いったん発達した認知機能が脳の障害により持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を来す状態である。日本では2025年現在、認知症患者は約471万6,000人と推計され、2040年には584万2,000人に達すると見込まれている。認知症は「神経認知障害群(ICD-11: 6D8)」に含まれ、軽度と重度に分類される。主な原因疾患は、AD、脳血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)であり、これらで認知症の大多数を占める
診断
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  1. 診断の基本は、本人・家族・介護者からの病歴聴取と状態観察である。認知症の有無をまず確認し、その後にタイプ別の鑑別を行う。ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination:MMSE)やHDS-Rなどの問診型検査に加え、Functional Assessment Staging(FAST)などの観察式評価、さらにIADL(日常生活手段的動作)評価を組み合わせることで、認知機能と生活機能の双方を多面的に把握することが可能であり、在宅医療における認知症診断と重症度評価において有用である(推奨度1、OJ)[1][2]
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  1. 認知症診断は臨床評価(問診・観察が基本)を優先し、画像検査(CT/MRI)を併用すべきである(推奨度1、OJ)[1]
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  1. ADに対しては、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)およびNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)の使用が、複数のRCTおよび国内外の診療ガイドラインにおいて有効とされており、標準治療として推奨される(推奨度1、RsJ)[1][3]
  1. 2023~24年以降、抗アミロイドβ抗体(レカネマブ、ドナネマブ)などの疾患修飾療法(Disease-Modifying Therapy:DMT)が登場し、軽度認知障害(MCI)期からの介入が注目されている。これらの薬剤は、アミロイドβの蓄積を標的とし、認知機能の低下を遅延させることが複数のランダム化比較試験(RCT)で確認されており、適切な患者選定とモニタリングのもとで使用が推奨される(推奨度1、Rs)[4][5][6][7]
  1. ADに伴うアジテーションに対して、ブレクスピプラゾールは、複数のランダム化比較試験(RCT)において有効性と安全性が示されており、2024年に日本で適応追加が承認された。これらのエビデンスに基づき、同薬の使用は標準的な治療選択肢として推奨される(推奨度1、Rs)[8][9][10]
  1. BPSDに対する抗精神病薬の使用は、可能な限り短期間に限定し、定期的に中止の試みを行うことが推奨される(推奨度1、J)[11]
  1. 非薬物療法:(参考文献:[12][13][14]
  1. BPSDに対する初期対応として、音楽療法や回想法などの非薬物的介入を第一選択とすることが推奨される。これらの介入は、患者の情動安定や行動の改善に寄与し、薬物療法に伴う副作用のリスクを回避できる利点がある(推奨度1、SJ)[15]
  1. 家族教育や環境調整を含めた包括的介入は、BPSDへの予防および対応、さらに介護者の精神的負担軽減に有効であり、早期からの実施が強く推奨される(推奨度1、SJ)[15]。特に、在宅療養においては、介護環境の見直し(例:騒音・照明・導線)、家族への疾患理解の支援、危機対応能力の向上といった多角的アプローチが症状の安定化や再入院の抑制につながる。
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  1. アルツハイマー病は進行性かつ死に至る疾患であり、終末期においては緩和ケアと意思決定支援(Shared Decision Making:SDM)が不可欠である。 特に、嚥下障害、栄養問題、肺炎などの感染症、疼痛や不安に対する苦痛緩和に対して、医学的管理だけでなく本人の価値観や家族の意向を尊重した対応が求められる。人工栄養(例:胃瘻)の適応についても、本人の意思やQOLを考慮した判断が必要である(推奨度1、SJ)[16][17]
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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:市橋亮一 : 特に申告事項無し[2025年]

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