今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 竹内裕也 浜松医科大学医学部外科学第二講座(消化器・血管外科学分野)

監修: 木下芳一 兵庫県立はりま姫路総合医療センター

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
参考ガイドライン:
  1. 日本食道学会:食道癌診療ガイドライン2022年版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、治療に関して追記した。
  1. わが国において開胸手術と比較した唯一のRCTとしてJCOG1409試験が行われ、術後全生存期間における胸腔鏡下手術の非劣性が証明された(Takeuchi H, et al. Journal of Clinical Oncology2024. 2024;249-.)。
  1. 術前化学療法症例における術後ニボルマブ療法について、有効性を明らかにするため、現在JCOG2206試験が進行中である。

概要・推奨   

  1. 多量飲酒および喫煙は食道扁平上皮癌の危険因子であり、その発生に強い関連性がある。またアルコール摂取と喫煙を併せるとその危険率はさらに上昇する。
  1. 食道表在癌では色素内視鏡検査やnarrow band imaging(NBI)観察を含む内視鏡検査、拡大内視鏡検査、食道造影検査、超音波内視鏡検査(EUS)などを行い、総合的に診断を行う。狭窄が強く、内視鏡検査が不十分である場合は食道造影検査、EUS、CT、MRI検査にて診断する(推奨度2、R)
  1. 食道癌の病期診断において、術前深達度がT1b以深の症例では術前にFDG-PET検査を施行することが推奨される(推奨度2、Rs)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 食道癌は、世界中で8番目に多い癌で男性(わが国の男女比約6:1)に多い。
  1. 60~70歳代に好発し、占居部位は胸部中部食道が最も多い(47%)。
  1. 組織学的に扁平上皮癌と腺癌が2大組織型である。
  1. わが国の食道癌の大半が扁平上皮癌(86%)で腺癌は7%であった[1]
  1. 食道扁平上皮癌は飲酒、喫煙が危険因子となる。
  1. アセトアルデヒドの代謝酵素活性の低い(アルデヒド脱水素酵素2型 [ALDH2] へテロ欠損型)人がアルコールを常飲すると、体内にアルデヒドが蓄積し扁平上皮癌のリスクを高める。
  1. 食道腺癌の発生には、胃酸の食道への逆流(Gastroesophageal reflux、GER)に起因するバレット食道が危険因子となる。
  1. 食道癌の病期分類は治療方針の決定や予後予測に重要であり、T因子(癌の壁深達度)、N因子(リンパ節転移)、M因子(遠隔臓器転移)により決まる。
  1. 食道癌の治療は病期により内視鏡的治療、外科治療、薬物治療、放射線治療を単独もしくは組み合わせて行う。
  1. 食道表在癌の多くが無症状である。
  1. 食道癌の約20%に同時性異時性の他臓器重複癌を認め、胃癌、咽頭癌の順で多い。
  1. ヨード染色に加え、NBI(narrow band Imaging)を用いた消化管内視鏡検査が早期癌の発見に有用である。
 
  1. 多量飲酒および喫煙は食道扁平上皮癌の危険因子であり、その発生に強い関連性がある。またアルコール摂取と喫煙を併せるとその危険率はさらに上昇する(推奨度2、O)
  1. まとめ:多量飲酒および喫煙と食道扁平上皮癌の発生に関して、複数のコホート研究がある[2][3][4]
  1. 代表事例:アルコールの代謝産物であるアルデヒドを分解するアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)には遺伝子多型があり、ALDH2不活型は大酒家における食道癌のリスクファクターと報告されている[5]
  1. 結論:多量飲酒および喫煙は食道扁平上皮癌の危険因子である。
問診・診察のポイント  
  1. 食道扁平上皮癌では飲酒、喫煙、フラッシャー(ALDH2遺伝子多型による飲酒時の顔面の紅潮)が危険因子となり、食道腺癌では胃食道逆流(GER)に基づくバレット食道が発生母地となるため、リスクファクターの問診が重要となる。また、食道は頸部・胸部・腹部の広い解剖学的範囲に存在する臓器であり、周囲臓器も占居部位によりさまざまであるため、出現する可能性のある症状も多彩となる。腫瘍が筋層以深に浸潤する進行食道癌は大部分が有症状で、腫瘍の増大による内腔の狭窄による狭窄感40%、嚥下困難18%などが主症状として出現する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹内裕也 : 講演料(コヴィディエンジャパン(株),ジョンソン・エンド・ジョンソン(株),大塚製薬工場,第一三共(株),小野薬品工業(株),MSD(株),大鵬薬品工業(株))[2024年]
監修:木下芳一 : 講演料(アストラゼネカ(株),武田薬品工業(株),大塚製薬(株),ヴィアトリス製薬(株))[2024年]

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