今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 前田智司 日本薬科大学薬学部

監修: 中原 保裕 (有)ファーマシューティカルケア研究所

著者校正/監修レビュー済:2023/07/19
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:てんかん診療ガイドライン2018
  1. 日本神経学会:てんかん治療ガイドライン2018追補版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. ドラベ症候群に効果が期待できる数少ない治療薬であるフェンフルラミン塩酸塩(商品名フィンテプラ内用液2.2mg/mL)の製造販売が2022年11月に承認された。

概要・推奨   

  1. 原則として、誘因なく2回以上てんかん発作を反復する場合に治療を開始する(推奨度1)
  1. 治療は年齢と、発作が部分発作であるか全般発作であるのかで第1選択薬が異なる(推奨度1)
 
関連コンテンツ:
  1. てんかん
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総論 

まとめ  
  1. てんかんの治療薬として、ヒダントイン系薬、ヒダントイン系配合薬、オキサゾリジン系薬、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬、バルプロ酸系薬、スルホンアミド系薬、フェナセミド系薬、イミノスチルベン系薬、スクシミド系、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ドラベ症候群治療薬、レノックス・ガストー症候群治療薬、AMPA受容体遮断薬ペランパネル(フィコンパ)、ラコサミド(ビムパット)、ビガバトリン(サブリル)などが存在する。
  1. 治療は、発作が部分発作であるか全般発作であるのかで第1選択薬が異なる。部分発作であればカルバマゼピン(テグレトール)、全般発作であればバルプロ酸(デパケン、セレニカ)を選ぶが、部分発作ではラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)も第1選択薬として用いられる。どちらの発作か判断し難い場合は、取りあえずバルプロ酸やレベチラセタム(イーケプラ)が導入しやすい。その場合には、経過の中で薬物を適正化する。
  1. 主な抗てんかん薬の治療域血中濃度と薬物動態:<図表>
  1. 抗てんかん薬の薬物相互作用:<図表>
  1. 抗てんかん薬の副作用:<図表>
  1. 他の薬剤が抗てんかん薬に及ぼす影響:<図表>
 
治療を始めるにあたり患者家族に説明すべき事柄

出典

日本てんかん学会ガイドライン作成委員会:小児てんかんの包括的治療ガイドライン. てんかん研究, 2005;23(3):244-248.
 
抗てんかん薬の作用機序

中原保裕:図解入門リベンジ薬理学[第3版].秀和システム、2015.p165より改変

出典

中原保裕:処方がわかる医療薬理学2022-2023.学研メディカル秀潤社、2022.P252 図1(一部改変)
 
治療:
  1. ポイント:
  1. 原則として、誘因なく2回以上てんかん発作を反復する場合に治療を開始する。また、治療は年齢と発作が部分発作であるか全般発作であるのかで第1選択薬が異なる。
  1. 薬物治療:
  1. 薬物治療は単剤、漸増が原則であり、複合剤(ヒダントールFなど)は基本的に使用しない。
  1. 成人の部分発作では、カルバマゼピン(テグレトール)を第1選択とすることが多い。ただし、小児の全般てんかん症候群や進行性ミオクローヌスてんかんなどではバルプロ酸(デパケン)が選択される。
  1. 高齢者の部分発作には、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)、ガバペンチン(ガバペン)などが推奨される。
  1. 部分発作の第2選択としては、ゾニサミド(エクセグラン)、ガバペンチン(ガバペン)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、フェノバルビタール(フェノバール)、クロバザム(マイスタン)、ペランパネル(フィコンパ)、トピラマート(トピナ)、バルプロ酸などの中から、副作用、相互作用、年齢、性別などを考慮しながら、患者に合わせて選ぶ。
  1. 漸増した薬剤は、副作用の出現しない上限まで使用する。ここまで増量すれば効果の判定ができるという用量は各薬剤で存在しない。
  1. 全般発作であればバルプロ酸を選ぶことが多い。第2選択薬としては、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミド、クロザバム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルが用いられる。
  1. 妊娠可能女性は、バルプロ酸以外の薬剤から選択することが望ましい。
  1. 欠神発作であればバルプロ酸、エトスクシミド、ラモトリギンが選択される。
  1. ミオクロニー発作であればバルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマートが選択される。
  1. なお、抗てんかん薬は、いったん開始すると小児期から老年期まで服用期間が長期にわたることが多い。したがって、妊娠の可能性などを考慮した薬剤選択が望ましい。
 
  1. 薬物血中濃度モニタリング(TDM):
  1. TDMが必要な薬剤は、フェノバルビタール(フェノバール)、プリミドン(プリミドン)、カルバマゼピン(テグレトール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、ゾニサミド(エクセグラン)、バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、エトスクシミド(ザロンチン)、クロナゼパム(リボトリール)、ニトラゼパム(ベンザリン)、クロバザム(マイスタン)、ガバペンチン(ガバペン)、トピラマート(トピナ)、ラモトリギン(ラミクタール)、レベチラセタム(イーケプラ)である。
  1. 至適血中濃度は下図を参考にしてほしい。
 
主な抗てんかん薬の治療域血中濃度と薬物動態

出典

日本神経学会監修、「てんかん治療ガイドライン」作成委員会編:てんかん治療ガイドライン2018、医学書院、2018、p124、表1
 
  1. 腎機能障害時の調整:
  1. 腎機能障害時、フェニトイン(アレビアチン)、ゾニサミド(エクセグラン)、ホスフェニトイン(ホストイン)、ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)、カルバマゼピン(テグレトール)では、薬剤用量の減量は必要ない。一方、エトスクシミド(エピレオプチマル、ザロンチン)、ラモトリギン(ラミクタール)、ガバペンチン(ガバペン)、トピラマート(トピナ)、ラコサミド(ビムパット)では薬剤用量の調整が必要である。
  1. 薬剤相互作用:
  1. 薬剤相互作用は下図を参考にしてほしい。
 
抗てんかん薬の相互作用

表はあくまでも参考所見である。

出典

日本神経学会監修、「てんかん治療ガイドライン」作成委員会編:てんかん治療ガイドライン2018、医学書院、2018、p129、表1
 
他の薬剤が抗てんかん薬に及ぼす影響

出典

日本神経学会監修、「てんかん治療ガイドライン」作成委員会編:てんかん治療ガイドライン2018、医学書院、2018、p131、表4
 
  1. 副作用:
  1. 副作用に関しては下図を参考にしてほしい。
 
抗てんかん薬の副作用

出典

日本神経学会監修、「てんかん治療ガイドライン」作成委員会編:てんかん治療ガイドライン2018、医学書院、2018、p75、表1
 
  1. 剤型:
  1. 剤型は、以下のようなものがある。
  1. 内用液:ピラセタム、オクノベル
  1. シロップ:エトスクシミド、デパケン、ガバペン
  1. 徐放剤:デパケン
  1. 坐剤:ジアゼパム
  1. 皮下注・筋注:フェノバルビタール(フェノバール)
  1. 静注:フェニトイン(アレビアチン)、フェノバルビタール(ノーベルバール)、ホスフェニトイン(ホストイン)ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)、アセタゾラミド(ダイアモックス)

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
前田智司 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中原 保裕 : 原稿料(学研)[2024年]

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抗てんかん薬(薬理)

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