今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 井口保之 東京慈恵会医科大学 脳神経内科

著者: 三村秀毅 東京慈恵会医科大学 脳神経内科

監修: 内山真一郎 国際医療福祉大学臨床医学研究センター

著者校正/監修レビュー済:2024/10/02
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]に基づき、下記の点を加筆修正した。
  1. 血栓回収療法の解説に、AHA/ASAのガイドラインにおける血管内治療が推奨される条件を満たさない症例における血栓回収療法の推奨度の詳細を記載した。
  1. 非心原性脳梗塞再発予防で推奨される抗血小板薬として、新規処方例の第1選択にチクロピジンは推奨されなくなり、2021年に脳梗塞に適応拡大となったプラスグレルが追加された。

概要・推奨   

  1. rt-PA(アルテプラーゼ)の静脈内投与は発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害では慎重に適応判断された患者に対して強く推奨される(推奨度1)
  1. 前方循環系の主幹脳動脈閉塞と診断され、画像診断などに基づく治療適応判定がなされた急性期脳梗塞に対し、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を含む内科治療に追加して、発症6時間以内にステントリトリーバーまたは血栓吸引カテーテルを用いた機械的血栓回収療法を開始することが推奨される(推奨度1
  1. アスピリン160~300 mg/日の経口投与は、発症早期(48時間以内)の脳梗塞患者の治療法として推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報  
  1. 脳梗塞とは、脳卒中の一種で、脳動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍塊などが詰まって血流を止めてしまうため、脳細胞が壊死する疾患である。現在脳卒中(脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患)は、要介護となる原因の約2割、死亡原因の約1割を占めている。
  1. 脳梗塞の診断は、既往歴と病歴を詳細に聴取し、脳卒中を疑うことから始まる。特に心疾患、血管疾患、腎疾患、血管危険因子が重要である。
  1. 一般身体所見、神経学的所見を確実に評価し、脳卒中か否か、脳卒中だとすれば病変部位はどこかを推定したうえで、CTやMRIなどで画像診断を行う。
  1. 画像診断は脳梗塞診断に欠かせない重要なツールだが、画像だけに頼ると診断を誤ることがある(無症候性病変を責任病巣と判断する、ほかの所見に惑わされて責任病巣を見落とす、など)。画像検査やほかの検査は、あくまで補助検査であることを認識する。
  1. また、脳梗塞の診断にはさまざまな画像検査が有用であるが、画像検査の前にまず素早い診察で脳梗塞であることを疑う必要がある。米国心臓協会のガイドラインでは、脳卒中治療の7つのD、①発見(detection)、②出動指令(dispatch)、③搬送(delivery)、④医療機関への到着(door、来院と迅速な救急部でのトリアージ)、⑤情報および各種検査(data)、⑥治療方針決定(decision)、⑦薬剤投与(drug administration)――は、診断と治療における主要な段階と、治療に遅れを生じ得るキーポイントを強調している。
問診・診察のポイント  
問診のポイント:
  1. rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法の適応が、発症4.5時間以内であるため、素早い問診や診察が必要になる。米国心臓協会では、病院来院時10分以内に病歴聴取と診察を終えることが推奨されている。したがって、血栓溶解療法や血栓除去治療が可能な時間帯(アルテプラーゼ静注療法(表<図表>)なら4.5時間以内)の診療の場合は、初回問診は発症時刻と既往歴、服薬歴に焦点を絞り、その他の情報は後で聴取することもあり得る。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
井口保之 : 特に申告事項無し[2024年]
三村秀毅 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:内山真一郎 : 特に申告事項無し[2024年]

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